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〈みたて〉西山隼人・美華、日々の花の飾り方

花のプロは普段の空間をどう飾る?人気の花屋を訪ねて、日常の暮らしに馴染む花と器の選び方や、真似したくなる飾り方を教わりました。

photo: Kunihiro Fukumori / Text: Mako Yamato

見立てることで景色に仕立て、
日本の美意識を草花で表現する

利休は瓢箪や魚籠を花入れに見立て、茶道具としての価値を生み出した。〈みたて〉が屋号に込めた思いも同じ。「見えないものに価値を見出し、新たな景色を見せられれば」と店主の西山隼人さん。

2013年春、街中から少し離れた静かな住宅街に店を構えた〈みたて〉。山野草を中心に折々に咲く花を揃え、ただ売るだけではなく植物と共にある空間を提案することで季節を伝えてきた。京都の景色を木箱に収めたり、故事に基づいた正月飾りを発表したり。

日本に受け継がれる美を、ユニークな視点で切り取った作品はどれも〈みたて〉ならではの美意識に満ちている。2019年には内装を一新。草花が彩りを添える、土壁と土間のシックな空間に生まれ変わった。漆の水盤には見本帖のように季節の草花が置かれ、それを見ながらあしらいが提案される。

京都 花屋 みたて 花器
その日、用意された草花が並べられた水盤。季節を先取りした植物を使わない〈みたて〉だけに、それは野や山に咲いている花でもあり、季節を伝える意味も持ち合わせてる。

そんな〈みたて〉が送り出すものの一つに「山のたより」がある。折々の草花と共に、苔や朽葉と呼ぶ落ち葉、石、花留に使われる股木などが和紙に包まれ、箱に収められて届く。「一輪一輪の花の良さが引き立つ贈り物を、と考えました。例えば梅が咲いたら箱に入れてさっと贈るような、素直な季節のやりとり。ただ、同じことを山に暮らすおばあさんがやったのでは敵わない。そこで贈り物として成り立たせるために、らしさを加えました」と西山さん。

手元にやってきた「山のたより」はどう取り入れるべきか。「必ずしも花器を使う必要はなくて自由に」と、南仏の骨董品のソースポットに塩壺、長野の川べりで出土した弥生土器など、洋の東西を問わず自在に器を選ぶ。また、西山さんが草花をいける際には、剣山などは使わない。

「無理に思う角度に整えるのではなくて、自然をいけることを楽しんでもらえたら。花を留める苔や石、股木は工夫の余地となるものですが、留まらないこともまた自然の姿だから」

京都 花屋 みたて 花器
ソースポットの植物は苔で留める。西洋骨董は古物商〈本田〉との展示『と、本田』から。

西山さんがさっと手を動かすと草花はまるで決まっていたかのように器に収まり、器は花器として輝きだす。朽葉は花の足元に添えることで、裏方としての股木を隠しつつ、春の芽吹きを思わせる仕掛けにもなる。

「草花を通じて季節を知り、そこにある美を感じてもらえたら」

京都 花屋 みたて 花器
彫刻されたガラスをすっきり見せるため、植物は股木を使ってグラスの縁に固定している。
京都 花屋 みたて 花器
朽ちて穴が開いた木片を使うことで、深い器にも可憐な草花が生けられる仕組み。
京都 花屋 みたて 花器
花を生けた上にそっと一枚の朽葉を添えることで、春の野の芽吹きを表現している。