WABARA Rose Farm KEIJI(滋賀・守山)
バラの根本的な美しさを追い求める。
祝い花として不動の地位を築いたバラ。観賞用に、華やかに品種改良されたものが市場流通する中、日本的な美意識を追求した花の姿に人々が目を丸くするのが〈WABARA Rose Farm KEIJI〉の“和ばら”だ。
「鮮やかな色合いで花弁の先が尖ったモダンローズが今は主流ですが、19世紀以前の野山に咲くバラはもっと楚々とした佇まいをしていました。その自然な姿が美しく、目指すバラはこれだ!と追い求め、養液栽培から土壌栽培へ切り替えたのが12年前のこと。野山の環境に倣い籾殻などの有機物を土にブレンドし、収穫時に出る残茎をそのまま土壌の上に置いて還す。毎年少しずつですが、多用な微生物が生息する環境が整い、今では土の1グラム中で10億匹を超え、理想の和ばらが育つ肥沃な土に変わってきました」と、3代目の國枝健一さん。
繊細な花びらや麗しい香り、細くてしなやかな茎、その曲がり方など、一本ずつ個性があるのも和ばらの特徴だ。
「栽培する約60品種の和ばらの中でも、自信作がシャルロット・ペリアン。2019年の家具デザイナーの没後20年の回顧展に合わせて作り出した品種です。花弁は60〜70枚。バラでは珍しいシャクヤクのような咲き姿で、パールのような光沢があり、シルバーともゴールドとも表現できる絶妙な色合い。徐々に色が移ろう姿はほかにない魅力がある」。
コスメブランド〈イソップ〉の香水《ローズオードパルファム》の着想の源にもなった、この品種。和ばらは、メキシコ、ケニアなど7ヵ国に苗が出荷され日本独自に育種された“WABARA”として世界中で親しまれている。
信州片桐花卉園(長野・飯島町)
恵まれた環境で花のポテンシャルを引き出す。
世界中の品種が日本で栽培されているが、地域に適正かを見抜くのも、生産者の腕。中央アルプス南駒ヶ岳と南アルプス連山に挟まれた長野県飯島町にある〈信州片桐花卉園〉では、毎年新しい品種も取り入れながら、厳しい目で美しい花の姿を追い求めている。
「日光をたっぷりと浴び、十分に光合成を行った花は、格別の美しさがあります。冬も晴天日が多い飯島町は、まさに花を育てるうえで打ってつけの地。繊細な草花でも、その見た目は力強く、花弁は艶がある。気候を生かし、花本来の生命力を引き出すことが、私の仕事と捉えています」と代表の片桐鏡仁さん。
最高の環境を生かし、露地と温室で約50品目を栽培。特に、花持ちが良く発色が美しいと評判なのがアルストロメリア。
「夏でも、夜は山から吹き下ろす風で涼しくなる気候にうまく適合したのが、暑さに弱いアルストロメリアです。いくら温室で育てているといっても、外気の影響は受けます。より鮮やかな花を咲かせるには、昼夜で寒暖差のある環境整備も大切。その点、アルプスに囲まれたこの土地は一年を通じて夜温が下がるため、発色が良く、白い品種はとことん白く育つ」と発色においても好立地。
花のほか、つる植物や野草も栽培する多品種栽培の強みを生かし、摘みたての草花のブーケを届けるウェブショップ「添える」をスタート。
「ブーケは、昨年からスタッフとして働くフローリストの小林由美が手がけます。彼女のフローリストとしての豊かな経験と、意見を取り入れながら、より広い視点で“美しい花の姿”の研究を重ねています」