ファインミネラル図鑑。Moldavite【モルダバイト】、Wulfenite【ウルフェナイト】etc.

photo: Tetsuya Ito / text: Shogo Kawabata / special thanks: PEANUTS MINERALS, USK MINERALS, TAK, Yoichi Ogasawara

透明感のある宝石質で美しい鉱物が、自然界に存在するありのままの姿。本来の結晶の様子や、他の鉱物と共生することで織り成すその景色は、まさに自然が生み出す芸術だ。その中でも特にハイクオリティな標本“ファインミネラル”たちを集めてみた。

初出:BRUTUS No.985「珍奇鉱物」(2023年5月15日発売)

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Rutile【ルチル】

まるで太陽の光のような放射状結晶が美しい

二酸化チタンの鉱物の一つで、針状になりやすく、ゴールドのような強い光沢が出る。ルビーやサファイアなどほかの鉱物に内包されることが多く、ブラジルではこの針状のルチルがクォーツの中に入った「ルチル入り水晶」が採れ、ジュエリーにも使われている。

ルチル/ヘマタイト/クォーツ

Rutile, Hematite with Quartz

二酸化チタンの結晶の一種であるルチルが黒いヘマタイトを中心に放射状に結晶化している美しい標本。上部のクォーツにも金色のルチルのインクルージョンが見られる。ブラジル・バイーア州産。55×50×55㎜。

Silver/Copper【自然銀/自然銅】

金と同様、古くから人類が利用してきた鉱物

自然銀は、空気に触れると表面が硫化して黒くなるため、美しい銀色を維持しているものは評価が高い。銀も銅も単体で産出されることはほとんどなく、ほかの鉱物に含まれた状態で出てくる。自然銅は、標本産地としてはアメリカのミシガン州が世界的に有名で、こちらは酸化で色が変わる。

自然銀/自然銅

Silver with Copper

アメリカ・ミシガン州の世界的に有名な銅鉱床からの産出。古樹のような標本の中にシルバーとカッパーがグラデーションのように共生している。このような状態で産出されるのは極めて珍しい。30×30×18㎜。

Moldavite【モルダバイト】

宇宙からやってきた隕石に起因するテクタイト

テクタイトと呼ばれる、隕石が地球に衝突してできた天然ガラスの一種。チェコのモルダウ川周辺で産出することがその名の由来だ。ほかの地域にもテクタイトは存在するが、チェコのものだけがグリーンに色づく。

モルダバイト

Moldavite

最高品質の標本が産出されていたチェコ・ベセドニツェ産。この産地のものは、美しい葉脈のようなテクスチャーと鮮やかなグリーンの発色が特徴的。現在は絶産となっている。44×30×14㎜。

Wulfenite【ウルフェナイト】

鉱物資源としても重要な鉛のモリブデン酸塩鉱物

ウルフェナイトは鉛のモリブデン酸塩鉱物で、産業的にも重要な鉱物資源とされている。本来はカラーレスだが、クロム酸が含まれるため、朱色に近いオレンジから黄色、褐色のような色合いになる。中でも、非常に鮮やかで透明感のあるオレンジ色の結晶となるものが人気が高い。

ウルフェナイト
Wulfenite

ウルフェナイト
Wulfenite

Pyromorphite【パイロモルファイト】


まるで苔玉のような趣のある、侘び寂び鉱物

グループの一つで、和名は「緑鉛鉱」。数mm程度の小さな結晶が群晶し、岩に苔がむしたさまを思わせる外観には独特の魅力がある。かつてはフランスが代表的な産地であったが、近年、中国から美しくユニークな標本が出てきており、人気が非常に高まっている鉱物だ。

パイロモルファイト
Pyromorphite

パイロモルファイト
Pyromorphite

パイロモルファイト
Pyromorphite

パイロモルファイト
Pyromorphite