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発酵をはじめる。麹カルチャーの初歩は「甘酒造り」

おだやかな気持ちで毎日を過ごすための生活習慣や趣味。やってみたい、やらなければ、と思いながら、先延ばしにしていることが誰しもあるはず。気構えず、楽しい入口を知って、心が喜ぶ豊かな暮らしをはじめよう。

Photo: Kazuharu Igarashi / Text: Asuka Ochi

教えてくれた人:小倉ヒラク(発酵デザイナー)

甘酒を造る。

誰もが簡単に再現しやすく、かつテンションが上がる発酵食品のレシピを日々開発しているという小倉ヒラクさん。ぬか漬けや味噌など、自宅でできる発酵にはいろいろあるが、エキスパートが勧める初歩は甘酒だ。

「前提となる知識が必要なぬか漬けや、大豆を煮る下処理にコツのいる味噌は意外と難しい。それらをすべて飛ばして、数時間から数日でできて絶対に失敗しないものからはじめるのがオススメです。簡単なのは塩麹、甘酒、水キムチ、ザワークラウトなど。塩麹は、麹と水と塩を混ぜるだけなので工程も少なくて最も手軽ですが、そのぶん手応えもない。まずは甘酒くらいがちょうどよく楽しいですね」

甘酒は、麹1に対して2の分量の水を混ぜ、炊飯器で6時間ほど保温するだけ。いろいろな種類がある麹は、きちんとした味噌蔵や酒蔵が造っているものを選ぶのも大切だ。

「保温の時、完全に蓋を閉めると熱が籠もりすぎるので、ふきんを1枚挟んで軽く蓋をするのがポイント。これだけで、砂糖すら使わずに、甘い飲み物が完成します。炊飯器での発酵を応用すれば白味噌も造れますよ」

白味噌の場合は、大豆1に対して麹が2。10%弱の塩を混ぜ、炊飯器で一晩。

さまざまな発酵をするうえで共通の注意点は?

「おいしく発酵させるコツは3つ。まずは、機嫌良くしていること。イライラしていると菌が逃げると醸造家もよく言います。そして塩分をケチらないこと。

悪い菌が入るような、ジメジメした場所に置かないこと。気前よくて頼りがいがあって明るいヤツの周りってどんどん人が集まるじゃないですか。それと同じで、おいしいものを作るいい菌がいるところって何を置いてもうまく発酵するんですよ」

発酵物を仕込み続けることで、家の中の菌の生態系も変わっていく。見えない微生物まで育つ感覚も発酵の魅力と言える。

「自分で煮ても焼いてもいないのに、微生物の力で味やテクスチャーが劇的に変わる。均一を目指す規格品には出せない、香りや酸味、複雑な風味が出るところも発酵の面白さですね」

炊飯器だけで作った甘酒
炊飯器だけで、まったりとした甘酒の完成!

発酵アイテムが揃う店。
〈発酵デパートメント〉

甘酒に最適の麹も扱う、発酵の本拠地。動画を見て発酵食品を学ぶ手作りキット「学べるDIYサブスク #ただいま発酵中」も。