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Tシャツには人が出る。〈ONICA〉デザイナー・黒沢秋乃

たかがTシャツ、されどTシャツ。Tシャツは、一枚一枚が持ち主の人生を雄弁に物語るものだ。〈ONICA〉デザイナー・黒沢秋乃さんにお気に入りのTシャツを教えてもらいました。

初出:BRUTUS No.1014「こんなTシャツ、欲しかった。」(2024年8月16日発売)

photo: Ding Ding / text: Shoko Yoshida / edit: Tamio Ogasawara

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グラフィックTシャツは過去の日常に帰れるタイムマシン

秋冬は試着のために〈ONICA〉のニットしか着ない分、私にとって春夏はのびのびと洋服を楽しめる季節です。Tシャツも気楽な気持ちで着ているだけですが、数年経ってグラフィックを見た時に、買った当時の一連の出来事が思い出として蘇るノスタルジーを宿しているような気がします。

ヘルシンキに留学中、毎年夏に行われる音楽フェス『Flow Festival』で買ったカリフォルニア出身の3姉妹バンドHaimのグッズTシャツもそうで、ボーカルは風邪気味で全然歌えず謝っていたこと、彼女たちの曲を聴きながら卒論を頑張ったこと、そして、最高に気持ちよかったあの夏が目の前に現れます。なにげなく過ごした過去にふと連れ戻してくれる力がTシャツにはあるのだなって思います。

バンドHAIMのプリントTシャツ
ハイムのオフィシャルツアーTシャツは3姉妹がワンちゃんに。Tシャツは化学繊維が入っていない素材を好むという黒沢さん。

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