カブトムシゆかり(昆虫アイドル)
忘れられがちな、“昆虫界のウサギ”。
これまで種類では20、個体の数で言ったら1,000以上の昆虫を飼ってきました。中でも印象に残っているのが、ビルマゴホンヅノカブト。英名は“Rabbit Ears Beetles”というのですが、胸角がウサギの耳みたいになっていてかわいいんです。
あと、飼育するうえでは、この胸角がちょうどいい持ち手になっているのもポイント。華奢な頭角は、持つと昆虫にストレスを与えてしまうので。“昆虫界のウサギ”というと、プリモスマルガタクワガタが人気ですが、「この子も忘れないで!」と言いたいです(笑)。
もう一つ思い出深いのは、ヨロイモグラゴキブリ。基本的に昆虫って卵を産んだら子育てはしないんですけど、卵胎生のヨロイモグラは半年くらいメスが中心となって子育てをするんです。その姿には、あるはずのない昆虫の母性が感じられて興味深かったですね。
横山寛多(イラストレーター)
青く、美しく、硬い虫たち。
僕は硬い虫が好きです。掴めるし、手のひらにのせてちょこちょこ動くさまをじっくり観察できるのもいい。見た目の美しい虫にも魅了されます。中でも奈良で捕れる青いルリセンチコガネ。これがまぁ、本当にきれいで。奈良に行かないと会えないのでご当地アイドルのようです。
国産の普通種ならモモチョッキリ、ジンガサハムシも身近にいながら感動的な美しさです。グンジョウオオコブハムシは南米の虫ですが、このハムシが標本箱に並んでいるのを見た時に「やべえ、宝石がいる」と思いました。宝石みたいな虫は数多くいますが、これはもはや宝石に6本の脚がついただけ。
サザナミマダガスカルハナムグリを初めて見た時にはあまりの美しさに変な声が出ました。標本を集め始めるきっかけになった罪深い虫です。好きな虫が多すぎて、正直絞り込めないのですが、青い虫はついつい集めてしまいますね。
呂布カルマ(ラッパー)
真逆を行く意図が読めない、透明のイモムシ。
きれいな虫に目がなくて。虫は体の模様、構造に無駄がなく、かちっとデザインされ切っているところがいいですね。特にクリアパーツが好みなので、ジュエルキャタピラーもジンガサハムシも、ネットで知って一目惚れ。日本のイラガの幼虫は見るからに毒がありそうだけど、ジュエルキャタピラーはちょっとおいしそう。わざわざ捕食されそうな姿になる、真逆を行く意図が読めなくていいですよね。
ジンガサハムシも、透明な翅の真ん中が金色で、これはテントウムシよりかわいいなと。ほかにもオオスカシバなど一部の蛾は、翅に透明な部分があって好きです。蛾はふさふさ、むっちりしていて、肉々しいところがたまらない。日常的にネットで虫の写真を見ていますが、毎年それまでのパターンをぶち破ってくるような種に出会うので驚きます。
やましたこうへい(絵本作家、デザイナー)
累代の楽しさを教えてくれたチビクワガタ。
絵本作家という職業柄、子供に向けて生態や、普段の動きを正確に伝えたいので、虫は飼育派。チビクワガタは名前への興味から入りました。コクワガタよりも小さく、成虫になっても朽ち木の中で暮らすので、野外の観察ではなかなかお目にかかれない。
数年前、奈良や八丈島で見つけた3匹を繁殖させ、今は家に300ほど。生態が面白くって、親子の同居期間が長く、成虫が幼虫のために朽ち木を細かく嚙み砕いて食べやすくするなど、社会性がある。成虫になってもしばらく色が赤いままであるのも愛らしく、家族で暮らす姿を絵本『ちびクワくん』にしたら、愛されるシリーズになりました。
採集禁止になる前に西表島で見つけたコブナナフシも順調に飼育中ですが、両性繁殖と、単性繁殖と分けて育てると、成長の速度に違いが見られ、奥深さにも魅入られています。