進化する日本の香水〈KITOWA〉。450年の老舗がプロデュース、和木が生むエレガントな佇まい

香水は西洋のもの、という考えはもう古い。日本発のフレグランスも続々誕生し、世界で評価も上昇中。今、日本人ならではの繊細な感性が生み出す香りに迫る。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Tsuyoshi Ode

そのバックグラウンドは、1575年に誕生した香の老舗〈日本香堂〉。天皇家に香を納めるなど、日本の香文化の歴史とともに歩む中、「これまでにない日本発のラグジュアリーフレグランスを作ろう」という思いが募る。

そこで3人のプロジェクトメンバーで2018年に創業したのが〈キトワ〉だ。古来建築物に多用されてきた日本の伝統的な樹木、ヒノキ、クスノキ、ヒバの天然オイルをベースに開発。そこに西洋の稀少な香料をブレンドする斬新なアプローチで、日本人ならではの繊細な美意識や五感を表現している。

日本発のメゾンフレグランスとして、着実にファンを増やしているブランドだ。アイテムは2種のオードパルファムをはじめ、バスエッセンスほか多岐にわたる。指揮を執るのは〈日本香堂〉出身で代表を務める保科裕之さんだ。

「これまでのフレグランス業界も新たな香りの挑戦者が続々誕生してきましたが、そのほとんどは欧米のブランドばかりでした。そこで、日本の歴史ある企業がやるべき形で、世界に通用するほかにないブランドを作りたいと思ったのが始まりです。

特徴的なのは、私たちがこだわり、得意とする和木から抽出したオイルを、高い濃度で使用した深みのある香り。香水といえば女性、というイメージも変えたくて、パッケージはジェンダーレスなデザインに仕上げました。“木”と“K”が隠れたロゴも気に入っています」

伽羅
最高級品の香木、伽羅(きゃら)も香りの参考に。

和木は香りが単調で、パフュームレベルの高価な香料とブレンドすることは至難の業。それをトップパフューマー堀田龍志さんが長年培った知識と技術で粘り強く検証し、実現した。伝統の薫香技術をベースに日本特有の和の香りに仕上げながらも、“安らぐ”という表現では物足りない、どこか凜としたエレガントな佇まいや存在感を感じさせる。まさに今、年齢、性別、国境を超えて世界に誇れる日本のブランドの一つだ。

〈KITOWA〉のオードパルファム
左/アルコールを使用せず、低刺激性成分を採用した「ヒノキ」の水性香水 50ml 18,150円。右/神聖な木として敬われる「ヒノキ」をモチーフにしたオードパルファム 100ml 24,200円。