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映画の街、調布生まれ。家族にやさしい「ねぶくろシネマ」は、どこまでも自由だ

日活調布撮影所と角川大映スタジオのある調布市。この街を“映画の街”として盛り上げる活動として、2015年に始まったのが「ねぶくろシネマ」だ。ファミリー層をはじめ、市民が映画を気軽に観られる環境をつくるため、屋外での上映イベントがスタートした。

Text: Hiroya Ishikawa

多摩川の河川敷や葛西臨海公園、北海道の廃校、川崎競馬場など、これまで40回以上にわたり、さまざまな場所で映画の上映イベントを行ってきたのが、ねぶくろシネマだ。はじまったのは2015年。調布市民と市役所とのブレスト会議がきっかけだった。

日活調布撮影所と角川大映スタジオがあることから、“映画の街”として知られる調布市だが、当時は市内に映画を観る環境が少ないことから、もっと気軽に映画を観られる環境をつくろうとの意見が集まった。

加えて市内には小さな子どものいる30代〜40代のファミリー層が多く暮らしているため、まだ映画をじっと観ていられない小さな子連れでも心置きなく映画を楽しめる場をつくってほしい。そんな市民の声を汲み取る形で、同年12月19日、第1回のねぶくろシネマが開催された。

調布駅前での屋外上映と大観衆
“映画の街”としての調布市を盛り上げるべく、駅前での上映が夏の恒例イベントになっている。写真は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』 を上映したときの様子。多くの市民が集まった。

第1回は、
真冬の多摩川河川敷で開催された

最初に選んだ場所は多摩川河川敷。京王線の橋脚にプロジェクターで映画を投影する形で行われた。上映した作品は、大泉洋主演の日本映画『しあわせのパン』。ねぶくろシネマ実行委員長を務めるパッチワークスの唐品知浩さんは、めちゃめちゃ寒かったと当時を振り返る。

「映画に出てくるパンとパンプキンスープを販売したので、それで体を温めながら、各々が持参した寝袋に入って作品を観ました。橋脚に映る作品は味わいがあって心地よかったです。7分に1回のペースで頭上を電車が通過するんですが、字幕を映したらその音は特に気にならなかった。大人たちはミノムシのような格好で映画を観ている一方で、子どもたちはその周りで自由に遊んでいる。なんだか不思議な光景でしたね」

京王線の橋脚の下で屋外上映
京王線の橋脚に映画を投影して、大人も子どもも一緒にワイワイ映画を楽しんだ。

2回目は同じ多摩川河川敷で『E.T.』を上映。「ちょうど満月の夜だったので、月が出たらいいなあと思いながら観ていたら、終わり際に現れてくれて盛り上がりました。子どもたちは最初E.T.を怖がっていましたが、途中からは“E.T.死なないで!”と叫ぶほど感情移入をしていたことも印象的でした」

むしろ、上映中に大声を出して
盛り上がってください(笑)

上映中に大きな声を出してもOKなところは、ねぶくろシネマの特徴のひとつだ。「例えば、『ボヘミアン・ラプソディ』のコンサートシーンではみなさんで大合唱していました。ネット配信などで個々に映画を観ることの多い時代だからこそ、ねぶくろシネマでは大勢で観るライブ感、一体感を楽しんでほしいと思います」

ボヘミアン・ラプソディの屋外上映で大合唱する観衆
川崎競馬場で上映された『ボヘミアン・ラプソディ』では、立ち上がって拳を振り上げて大合唱する場面も。

映画の世界観を味わえる
場所で見るおもしろさ

もうひとつの特徴は、映画の臨場感を盛り上げるようなユニークな場所で開催すること。「『ジュラシック・ワールド』を千葉県柏市・柏の葉 T-SITEにある、いかにも恐竜が出てきそうな池の前で上映したり、埼玉県朝霞市の青葉台公園にある野球場で『フィールド・オブ・ドリームス』を鑑賞するなど、場所と映画を組み合わせることで、よりおもしろい擬似体験ができるように企画しています」

家族で映画を観る機会が減っている今、ピクニックに出かける感覚で、好きな飲み物や食べ物を持参して、子どもたちと一緒に楽しんでほしいと話す唐品さん。次の開催は「ねぶくろシネマ」のSNSをチェック!