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『エチオピア高原の吟遊詩人』を読んで。ジョイマン・高木が、アフリカの歌芸人に生き抜く術を学ぶ

エチオピアで音楽を生業とする職能集団アズマリ。著書『エチオピア高原の吟遊詩人』でその生き方に迫った人類学者の川瀬慈に、リズムネタ芸人のジョイマン高木晋哉が話を聞いた。

Text: Daiki Mine

エチオピアの吟遊詩人と日本の芸人の意外な共通点。

高木晋哉

自分と比べながら読みましたが、面白かったです。色んな場所に呼ばれて歌うところは、僕らが営業でリズムネタをするのと近いものを感じますね。

川瀬慈

農作業や儀礼、お祭りや酒場と演奏する場所は幅広く、まさに営業ですね。また彼らの歌もある種リズムネタと言えます。歌や演奏がうまいことより、場を支配するようなグルーヴを生むことが大事。そして韻も重要で、歌詞のつじつまを合わせること以上に気持ちいい韻を踏むことが重視されます。

高木

「ありがとう オリゴ糖」と一緒ですね。自分も、全然違うけど何か気持ちいい言葉を並べているんです。

川瀬

その言葉のグルーヴで場を作るんです。客も試されます。チップが少ないと婉曲的に歌詞のなかで揶揄され、大恥をかかされます。

高木

僕たちも企業の社長さんに目がけて「社長 脱腸」とかちょっと落とす韻を踏むと、営業の場が盛り上がるみたいな小技はあります。どこまで踏み込むか、経験から案配をつかんでいくところも似ていますね。

川瀬

アズマリも少年少女時代から叩き上げでパフォーマンスを磨いていきます。大人から邪険にされたり、暴力を食らうこともある。でも聴衆からの罵倒を即興的に歌詞に反映するなど、したたかです。

クラブで弦楽器マシンコを演奏する職能集団アズマリ
クラブで弦楽器マシンコを演奏するアズマリ。国際的なスターも生まれている。

高木

僕たちも一発屋と言われてきたけど、古いんじゃなくてアンティークなんだとか、キレが悪いんじゃなくてコクを大事にしているとか、それを逆に笑いに変えようとしているので、学ぶところが多かった。

川瀬

それはこの本で伝えたかった最も重要なことです!端に追いやられた存在にこそ宿る創造性やしたたかさには、この時代を生き抜くためのヒントがあるかも。ぜひ今度ジョイマンを引き合わせたいですよ。

高木

コラボしたいですね。アズマリ、鼻づまり