石田たくみ
もともとゲームは好きでした。YouTubeチャンネルで取り上げるようになったのと、自分でビートを作るようになって音ネタを掘る感覚で聴き始めたら、改めてゲーム音楽っていいなあと。今日は田中さんに色々教えてほしいです!
田中“hally”治久
喜んで。YouTubeで『スーパードンキーコング2』の作曲家デビッド・ワイズさんに会いにイギリスに行かれてましたね。
石田
小学生のときに聴いた彼の曲が原体験なんです。「とげとげタルめいろ」のステージで流れる「Stickerbrush Symphony」が大好きで。海外っぽい空気を感じたのかな。
田中
当時、海外のゲームにはこういう路線があったんですよ。『スーパードンキーコング』もイギリスのレア社の開発。ただ移植が少なくて、日本人の耳に新鮮だったのかなと。
石田
初代『スーパードンキーコング』のオープニングも良くて。環境音から徐々にドンドコドンドコ。
田中
『スーパードンキーコング』はジャズ、テクノ、カリビアンの3つが柱です。スーファミの中でも音の奥行き作りがぬきんでた作品の一つ。
石田
シンプルな曲だとスーファミ『スーパーメトロイド』の「サムス登場」は、単調なのに頭に残るカッコよさ。最新作『メトロイド ドレッド』でも流れて、嬉しかったなあ。
田中
特徴的ですよね。初代『メトロイド』で「サムス登場」を作った田中宏和さんは「この頃ゲーム内で音楽が流れ続けるのは好きじゃなかった」とおっしゃってたんですよ。
石田
なるほどー。『スーパーメトロイド』もBGMはわりと抑えめでした。だから印象に残ったのかも!
田中
作曲家によってアプローチが違うんですよね。すぎやまこういちさんは長く聴いても疲れない、飽きないという部分を大事にしてらして。
石田
あと耳に残るのは『星のカービィ スーパーデラックス』の「激突!グルメレース」。あれ、めちゃくちゃ運動会で流れてそうなんです。
田中
「クシコス・ポスト」ですね。
石田
ですです。一回これを聴くと、運動会の曲が思い出せなくなる(笑)。
田中
広い意味ではパロディだと思います。後半で低音が入るのも同じ。『カービィ』シリーズはすごく周到に曲を作っていて、気づかないようなパロディが色々あるんです。
石田
追い詰められるとよく頭の中で流れてたのが『メタルギア ソリッド』の「エンカウンター」。下校時に雨降りそうってときとか。
田中
それは嫌ですね(笑)。『メタルギア ソリッド』はハンス・ジマーの映画音楽を意識したであろう重厚な音楽が中心。この頃はハードがプレイステーションになってゲーム音楽文化はガラッと変わったんですよ。なにしろソニーのお膝元だから、関連作曲家も多く起用され、ゲーム音楽らしさが塗り替えられた。そのおかげで『パラッパラッパー』のようなリズムゲームも生まれました。
石田
最近のゲームだと『Stray』も良かったです。猫を操作してあっぶねえとこを探検するんですけど、道端のロボットに話しかけるとギターを弾いてくれるんですよ。その「落ち着いて」って曲が良くて。
田中
ギターの音色の揺れが今っぽいですよね。Lofi hip hopみたいで。
石田
ムーディで、ビートを入れたらいい感じになりそう。「とげとげタルめいろ」にも通じるんですよね。
田中
お好きそうなジャンルだと『サムライチャンプルー HIPHOPサムライアクション』がありますね。
石田
というとNujabesですか?
田中
違うんですよ。でもテイストはヒップホップで、サブスクにもない名曲揃い。海外だとシティポップ風の『パラダイスキラー』もぜひ。
石田
ほんとだ、山下達郎みたい。
田中
こういう細かい情報が手に入るようになったのはインターネット以降なんですよ。どんな音楽かは遊ぶまでわからないですから。
石田
確かに。僕もゲームは純粋にどれだけ楽しめるかで選びますね。ジャンルだとフロム・ソフトウェアの『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』みたいな死にゲーが好きなんです。難しいゲームを必死でやっていても耳に入ってくるのが、ゲーム音楽の強さだなあって思いますね。