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アイクラー・ホームを住み継ぐ Vol.3 未来を明るく信じさせてくれる、光あふれるガラスの家

アイクラー・ホームと呼ばれる住宅をご存じだろうか。ジョセフ・アイクラーという人物によって、半世紀以上も前に建てられたヴィンテージ住宅だ。時代を超えたモダンな美しさと、アイクラーのビジョンを今に住み継ぐ、3組の住み手たちを紹介しよう。

photo: Yoko Takahashi / coordination: David G. Imber / text: Mika Yoshida / edit: Kazumi Yamamoto

未来を明るく信じさせてくれる、光あふれるガラスの家。

つい3ヵ月前にリノベが完了したこの家は、ヤアルと妻シムリットにとって2軒目のアイクラーだ。そもそもは、彼をSFに引き抜いたグーグルにあてがわれた家が不便な場所にあったのが始まりだった。

地域情報サイトを通じてヤアルが自力で見つけた賃貸物件、それがたまたまアイクラー。友人からアイクラーの本をもらって学んだのは入居後のことだ。母国イスラエルでは工業デザイナーの母とエンジニアの父のもと、バウハウスの家に育ったヤアルはこのモダニズム住宅にホレこんだ。

2軒目が、マウンテンビューで1972年に建てられたこの家だ。柱と梁で構成されるポスト・アンド・ビーム構造、太い梁に対し横木が垂直に交差する天井、地面から天井までの大きなガラス、とアイクラーの特徴を強調するリノベや補修を行う一方で、ヤアルたちは大胆なアレンジも試みた。

例えば暖炉やパティオを撤去し、細かく複雑なスペースも取り払って一つの大きなリビングスペースに。キッチンやダイニングも兼ねているので、幼い子供たちの面倒を見ながら料理をしたり、とマルチタスクが可能になるのは、仕事に追われる若いパパママには重要なポイントだ。夏ともなれば故郷から10人単位で家族が遊びに来るが、これだけ開放的な空間があれば充分対応できる。

壁にはハーマン・ミラーのヴィンテージポスターのあるダイニング
以前はここにパティオが。光が移り変わる様子や夜空が楽しめる、ヤアルが最も好きな場所。天井はリモコンで開閉。壁にはハーマン・ミラーのヴィンテージポスター。

ヤアルたちは必ずしもアイクラーのオリジナル備品にこだわらない。だから「うちのライト誰かいる?」とアイクラー仲間にテキストしては、欲しい人に譲る。代わりにもらうのはモノではない。ベテランアイクラー住人からの知識やノウハウだ。「アイクラーはモダンで古くて、同時に明るい未来を感じさせる。モダニズムとは科学と能率、ミニマリズム、そして人類の進歩を信じることにほかなりません」、そうヤアルは語る。

ヤアル・シュニットマン
ヤアル・シュニットマン