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アイクラー・ホームを住み継ぐ Vol.2 サンフランシスコだけに存在する、都市型アイクラー

アイクラー・ホームと呼ばれる住宅をご存じだろうか。ジョセフ・アイクラーという人物によって、半世紀以上も前に建てられたヴィンテージ住宅だ。時代を超えたモダンな美しさと、アイクラーのビジョンを今に住み継ぐ、3組の住み手たちを紹介しよう。

photo: Yoko Takahashi / coordination: David G. Imber / text: Mika Yoshida / edit: Kazumi Yamamoto

サンフランシスコだけに存在する、都市型アイクラー。

「すっきりとしたモダンな家に住みたい、と思ったのがきっかけでした」とアレックスが回想する。SF住宅の典型であるヴィクトリア王朝風の家にはもう充分住んだ、とパートナーのマーティンと共に見つけたのが、ダイヤモンド・ハイツのアイクラー。通常のアイクラーは平屋建て。これはSFスタイルと呼ばれる、2階、3階と垂直に伸びる都市型アイクラーだ。

2代目住人が覆っていた白い漆喰の部分も塗り直した。左の壁も合板を剥がし「KAYU-BATU」を張ることでオリジナルに限りなく近い姿を目指す
彼らの前の、2代目住人が覆っていた白い漆喰の部分も塗り直した。左の壁も合板を剥がし「KAYU-BATU」を張ることでオリジナルに限りなく近い姿を目指す。

アイクラーという名称は耳にしたことがあったが、2人ともほとんど知識はなかった。だがクリーンなラインや自然との共生、合理性に魅了される。また人々の多様性を重視するという、当時きわめて進歩的だったアイクラーの考え方にも強く共感したという。

2006年に購入し、大がかりなリノベーションを行うこと7ヵ月。父親が建設業に携わっていたマーティンは持てる知識とノウハウを駆使し、見た目は真新しく、中身は1962年に建てられた時のスピリットを保つ大改装を行った。

もともとモジュールやパーツの組み合わせによる実用重視の住宅のため、歪んで見えてしまう部分もあちこちに。だから並びの悪いラインは揃え、目立たせたくない部分は暗くする。あるいは寝室の床と同じタイルを、外のベランダの床にも張ることで中と外が自然につながる感覚を高めていく。

「穏やかな空間にするために」と2人はこの家を白とマホガニー、グレーの3色で統一した。光は自然光、そして最小限の間接照明だけ。前の住人が設置したエアコンは撤去し、床暖房を入れ直す。改築工事が始まった時、よそ者による転売目的の大改築⁉と慌てた近隣のアイクラー住人たちがチェックしに来たそうだ。が、アイクラーの特長とスピリットを蘇らせる工事と知り「私たち、逆に感謝されたんですよ」と2人は愉快そうに顔をほころばせた。

(左)マーティン・H・タネンバウム(右)アレックス・インガーソル
(左)マーティン・H・タネンバウム(右)アレックス・インガーソル