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金曜日は土に触れよう。〈mitosaya 薬草園蒸留所〉が提案する、自由な農業のカタチ『Farming Friday』

土に触れると、地球が持つ体温を感じる。普段の暮らしでは出会うことのない虫や動物が、循環する世界を作っていることに気づく。収穫した作物を食べる幸せだけでなく、自分で育てている実感が、未来と希望を生む。不確かな時代に確かな何かを求め、畑へ。

Photo: Masanori Kaneshita / Text: Masae Wako

金曜日は土に触れよう。
蒸留所が提案する、自由な畑仕事。

とある金曜日の朝9時。千葉の蒸留所に集まって畑仕事に勤しむ人々が約10名。1人で初参加の人もいれば常連組もいて、まるで夏休みの課外活動のよう。「金曜は土を触ろう、というシンプルな提案を始めました。会費なし、報酬なしの自由参加。みんなで敷地の一角の土を耕し、植物を手入れしています」と話すのは、蒸留家の江口宏志さんだ。

2017年、千葉県に〈mitosaya 薬草園蒸留所〉を開設。植物を育てながら、果実を発酵させ蒸留したオー・ド・ヴィなどの蒸留酒や加工品を造っている。そんな江口さんが今年から力を入れているのが、自然に触れる楽しみを様々な世代と共有する場を作ること。本日の『Farming Friday』もその一つ。

「栽培や収穫だけが目的なのではなく、植物を深く知り、人と植物が交流する場を作りたい。興味があってもすぐ畑を持てるわけではないし、一人では始められない人もいる。気が向いた時に参加して、良い経験になれば、と」

現にこの活動が楽しくて、自分で畑を始めた人もいる。さらに、敷地内や近隣の農家で育った果物や野菜を無人販売する、週末スタンドショップの試みも。

「自然から発想したもの作りには無理がないし、誰でも接点を持てる。何よりおいしいのがいいんですよね」

数百種の薬草や植物を栽培する〈mitosaya薬草園蒸留所〉。この日は江口さん(中央)と、千葉県鴨川市でハーブなどの栽培を行う〈苗目〉の井上隆太郎さんが主催する『Farming Friday』。ボランティア&自由参加の畑仕事だ。