用の美を楽しむ、憧れの山ぶどうの籠
例えば真珠のネックレスやとっておきの腕時計のように、いつの日か手に入れたいと憧れるものがありますが、その一つが山ぶどうの籠。迎えたのは2019年のことです。山形の米沢にある〈みちのく蔓工芸所〉を訪れた際、見たことのない細幅のツルで編まれた籠に出会いました。
山ぶどうのツルは山の奥深く、道なきところにまで入って採るのですが、危険と隣り合わせ。硬く太いツルを職人の手で細く切り揃えるのも骨の折れる作業です。いくつも手当てされてやっと出来上がる籠にすっかり心奪われてしまい、思い切って作っていただくことに。
A4サイズの書類を半分に折って入れられるくらいの大きさで、財布に携帯電話、水筒と手拭い、文庫本、サングラスなど普段の持ち物を想像して型を選びました。大きすぎず、小さすぎず、実用的だけれど、手に持った様子は美しい。そんなわがままが叶った籠は愛しさもひとしお。手の脂が馴染んでいくことで深い飴色に育つのも楽しみで、持つたびに優しく撫でています。
