『Qアノンの正体 Q : INTO THE STORM』
いつの時代も陰謀論は、やっかいな存在だ。闇の国なる存在からアメリカを守ることを目的とするQアノンは、ネット掲示板で“Q”と名乗る人物が投稿したことをきっかけに、2020年の大統領選挙を控えた米国中にその存在が知れ渡った。
Qがドロップするメッセージに全米の“Qチューバー”たちが解説と支援を繰り返すことで、一般の人々にも浸透していく。オリジナルQTシャツを着て演説する人やQソングを作る人など、自由の国アメリカらしいQアノン信奉者たちの行動は、日本に暮らす私たちにとっては、ドン引きするほどのインパクトがある。
彼らの共通点は「とにかくアメリカが大好きで、他者の侵入は許せない!アメリカ最高!」的な過激思想を持っているということ。この集団が熱狂的に支持しているのが、前大統領のドナルド・トランプなのだから、国内が荒れるのも頷けるだろう。
ネットの掲示板からスタートしたQのメッセージが、多くの信奉者を集め、大統領選挙戦を揺るがし、最終的には連邦議会襲撃事件まで起こしてしまう……。Qアノンの正体を追いながら、ネットのリアルが現実になる「ウソのようなホント」の様子を記録したこの作品、見逃すわけにはいかない。
『ボクらを作った映画たち』
『ボクらを作った映画たち』は、大ヒット作の出演者やスタッフを取材したシリーズ。試写を観たプロデューサーが「フィルムを焼き払え」と激昂した『ダーティ・ダンシング』、当初は世相を踏まえたシリアス路線の予定だった『ダイ・ハード』……苦労や困難を乗り越え、日の目を見た名作たちが、余計に愛おしく感じられる作品だ。
なかでも、ぜひ観てほしい異色作が『ゴーストバスターズ』の回。主人公の3人の素顔がクロースアップされている。スタンツ博士役のダン・エイクロイド(実は霊媒師の家系の生まれなんだって!)が作品のアイデアを売り込み、コメディ映画の監督をしていたスペングラー博士役のハロルド・ライミスと共同で脚本を執筆。
そして、気まぐれだけど本番には強いヴェンクマン役のビル・マーレイの存在……。映画さながら3人の絶妙なコンビネーションで作り上げられたということがわかる。後年、重病に苦しむライミスの病床へ、長年仲違いしていたマーレイが突然現れた話には、グッとくるものがある。
オリジナルに熱狂した世代はもちろん、2022年2月公開の新作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を待つ新しいファンも、思わず胸が熱くなる話が詰め込まれている。
『FYRE : 夢に終わった史上最高のパーティー』
史上稀に見る大失敗に終わった伝説のフェスの裏側に迫るドキュメンタリー。起業家のビリー・マクファーランドは、豪華フェス『ファイア・フェスティバル』を企画し、PR映像を制作。
水着姿のスーパーモデルが南の島で楽しそうに遊び、「麻薬王パブロ・エスコバルが所有していた南の島で、豪華な宿泊と食事を楽しみながら、音楽フェスを体験する」とアピールする映像は、25万ドルで契約した数百人のインフルエンサーの投稿によってバズり、高額のチケットも飛ぶように売れた。
しかしその裏側で、運営スタッフたちは「予定した会場が使えない」「宿泊施設が足りない」「インフラが整備されていない」など、次々に起こる問題に振り回される。そもそもフェスの中核スタッフが召集されたのは開催2ヵ月前、どだい無理な計画なのに、ビリーは現実を直視せず、客に現状も伝えず、強引に開催を目指す。客の問い合わせもすべて削除して、なかったことにするありさまだ。
そのまま開催当日を迎えたフェスは、予想通りどころか予想以上の大惨事を迎える。次々に起こるトラブルに爆笑必至!なのだが、無茶なプロジェクトに関わったことのある人なら、気が気ではなくなるはず。