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大切なのは“余白”を持たせること。現代アーティスト・田口佳弥の鉱物の飾りかた

色や形に惹かれて手に入れた鉱物を、日々の楽しみとして生活に取り入れるにはどう飾ったらいい?もっと自由で身近なディスプレイを学ぶべく、鉱物好きなクリエイターの自宅やアトリエを訪ねました。


本記事も掲載されている、BRUTUS「珍奇鉱物」は、2023年5月15日発売です!

photo: Keisuke Fukamizu / text: Masae Wako

古道具の棚や木箱に飾る。大切なのは“余白”を持たせること

「鉱物と古道具は相性がいいと思うんです。僕は朽ちた木の箱やびた鉄枠のガラスケースに飾るのが好き。コツは詰め込みすぎず、余白を持たせることでしょうか」

現代アーティストの田口佳弥さんが暮らす自宅兼アトリエを訪ねると、棚の上や机の片隅など至るところに鉱物が置かれている。まるで植物好きが部屋中にグリーンを飾るように。

「そう、植物と同じです。“何でこうなったの?”という予測不能な色や形を眺めたり、触って質感を楽しんだり。だからケースに入れずに飾るのが好きで、埃がたまるのを防ぐためにもディスプレイは頻繁に変えています。気分や季節に合わせて場所を移動することもあれば、“今夜のお酒にはコレが似合う”って、音楽を選ぶように石を飾る日もある」

魚の形のカッパー(自然銅)を古道具の銅鉢にポツンと置いて、金魚鉢に「見立て」る飾り方も印象的だ。

「“見立て”を取り入れると、自分との距離が近くなるし、親しみが湧く。石が生活の中に溶け込むんです」

そういう気軽な飾り方を広めたくて鉱物商〈鉱物冰〉も始め、セレクトした鉱物とともに自作の飾り箱や古道具も提案する。

「贈り物として鉱物を選ぶ。そのくらい身近になるといいですよね」

机の上に並べられたクロライト・オン・クォーツと溶岩石と〈鉱物冰〉をイメージして作ってもらった精油
「この石のためだけの木箱」も自作。小さな枡にはクロライト・オン・クォーツ。左上は多孔質の溶岩石と〈鉱物冰〉をイメージして作ってもらった精油。