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フードライター・渡辺紀子が薦めるあの宿の、この一品

「この料理のために行きたい」「あの温泉のあれが食べたい」、日本全国のおいしいものを知り尽くす温泉通の渡辺紀子さんに、おいしい温泉宿をジャンルごとに聞きました。実際に行って、食べた人にしかわからない名物料理ばかり。温泉や宿のクオリティも保証済みです。

illustration: Yumi Uchida / text: Mutsumi Hidaka, Mimi Odahara / edit: Rie Nishikawa

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渡辺紀子が薦めるあの宿の、この一品

海鮮

天然とらふぐ料理/〈和味の宿 角上楼(かくじょうろう)〉(愛知・伊良湖温泉)

内田有美 イラスト

秋から冬にかけて旨味が濃くなる極上の天然トラフグをたっぷりと

昭和元(1926)年創業、国の登録有形文化財に指定された歴史ある宿。大正や昭和の時代の情緒が感じられる。「愛知県の渥美半島は年間を通して天然のトラフグが獲れ、日本一の天然物の水揚げを誇る場所。大きいほど旨味、ゼラチンが濃くなるといわれ、3kgを超えるような上質のトラフグがフルコースで味わえます。炭火で焼く、大アサリもおすすめ」

野菜

草鍋/〈鹿教湯(かけゆ)温泉 三水館〉(長野・鹿教湯温泉)

内田有美 イラスト

春を感じる野草と山菜がぎっしり。冬に落ちた代謝を上げるデトックス鍋

春になり雪が解けて、里山の地に力強く芽吹く野草を集めた人気の鍋。「セリ、クレソン、ニラ、カンゾウといった山盛りの山菜を楽しむ草鍋は、すっきりとしただしに地鶏を合わせた優しい味わい。宿で出会うお客さんたちから秋のキノコ鍋を薦められ、たまらずに秋にも訪れてしまうことになります。松本から足を延ばして訪れたい、美食の宿です」

山形牛の会席料理/〈名月荘〉(山形・かみのやま温泉)

内田有美 イラスト

しっとりした名旅館が選び抜いたA5ランクの絶品山形牛

蔵王連峰や雄大な奥羽山脈を望む眺望が楽しめる山裾の宿。「ありそうでない、ゆったりと落ち着ける大人の雰囲気がお気に入りの理由です。地元の海の幸と山の幸で構成される会席のコース料理がゴージャスで、特にメインの山形牛のステーキは特筆すべき。お肉そのものがとてもきれいな霜降りで、いい脂は後味もすっきり。レアでいただきます」

逸品

宝楽焼き/〈瀬戸内の水軍浪漫をたどる宿 汐の丸〉(愛媛・湯ノ浦温泉)

内田有美 イラスト

瀬戸内の恵みをダイレクトに味わう子供の頃から食べてきた名物料理

今治市の海沿い、村上水軍の歴史を感じるエリア。村上水軍が祝いの際に食した宝楽焼きが名物。「土鍋に熱々の石をのせて鯛やエビなど、瀬戸内の新鮮な海鮮を盛り、その上に日本酒を振ってジュワジュワ音とともに楽しむ料理。ここに欠かせないのが卵で、ゆで卵とも温泉卵とも異なる、少しもそっとしたような蒸し卵がなんともいえない味わいです」

飯/麺

鯛釜めし/〈美賀登(みかど)〉(愛媛・鈍川(にぶかわ)温泉)

内田有美 イラスト

昭和レトロなのんびりした温泉郷で〆る鯛のだしが効いた炊き込みご飯

愛媛県の北東部、今治市の渓谷に位置する名勝地で、道後温泉、本谷温泉と並ぶ伊予の三湯の一つ。その中でも料理自慢の和宿として知られる。「名物はイノブタを使った味噌仕立ての大鍋料理。豪華なイセエビの海鮮舟盛りなどもありますが、忘れ難いのが最後に出てくる鯛と山菜を使った釜めし。上品で風味豊かな鯛のだしがほっとさせてくれます」

酒/飲料

干かに竹酒/〈西村屋本館〉(兵庫・城崎温泉)

内田有美 イラスト

城崎温泉といえばカニ。昔から愛されてきた干したカニの香ばしい酒

城崎を代表する老舗料理旅館の伝統の酒。冬のカニの時期だけに提供されるもので、竹筒に乾燥させた干しカニの脚を2本入れ、日本酒を2合、炭火で燗にする。「何ともいえない香りと干したカニの旨味がお酒に浸透しています。カニ自体にはそれほど興味がないのですが、このお酒だけは冬になると飲みに行きたくなる。そんな特別な味わいです」

朝食

和朝食/〈ATAMI せかいえ 月の道〉(静岡・伊豆山温泉)

内田有美 イラスト

朝から贅沢な気持ちに。目前の鉄板で仕上げてくれる朝食

〈月の道棟〉と〈せかいえ棟〉があり、それぞれ客室のタイプとレストランが異なる。スイートやプレミアム客室を有する〈月の道棟〉での食事は、鉄板焼きのカウンタースタイル。「ディナーの肉料理も素晴らしいのですが、和食か洋食かを選択できる朝食も鉄板焼き。和朝食は、野菜のソテーや熱々のだし巻き卵をシェフが鉄板で調理してくれます」

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