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温泉ビューティ研究家・石井宏子が薦めるあの宿の、この一品

「この料理のために行きたい」「あの温泉のあれが食べたい」、日本全国のおいしいものを知り尽くす温泉通の石井宏子さんに、おいしい温泉宿をジャンルごとに聞きました。実際に行って、食べた人にしかわからない名物料理ばかり。温泉や宿のクオリティも保証済みです。

illustration: Yumi Uchida / text: Mutsumi Hidaka, Mimi Odahara / edit: Rie Nishikawa

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石井宏子が薦めるあの宿の、この一品

海鮮

鮑(あわび)のお刺身/〈いわない温泉 髙島旅館〉(北海道・岩内温泉)

内田有美 イラスト

この値段で、アワビが1人丸々3個も!北海道で存分に海鮮を食べるならココ

日本海と積丹(しゃこたん)半島を一望する小さな宿。「目の前の浜で獲れた天然ものを直球で。シンプルだからこそ、目利きや仕事の確かさが味を左右します。活き平目にウニにカニと数え切れないほどの魚介が並びますが圧巻はアワビ。身を丸かじりで味わえる刺し身や、炭火焼きに鍋など料理も様々。なのに驚きの良心価格!1年分の予約が1日で埋まるのも納得です」

野菜

野菜の鉄板焼/〈雲仙福田屋/山照 別邸〉(長崎・雲仙温泉)

内田有美 イラスト

目の前の鉄板で焼き上げ熱々を頬張る。野菜の力強さとライブ感に魅了される

長崎和牛や海鮮もさることながら、注目は鉄板焼〈桜橋〉の有機野菜ステーキ。「生命力がすごい。力強いエネルギーを感じます。島原は種採り野菜の栽培が盛ん。しかも無農薬・無肥料の自然農法を営む農家が集まっています。作物から種をとって脈々と命をつなぎ、食べる私たちの命の糧にも。そんな野菜が目の前で調理され、食べられるのはここだけ!」

鴨すき鍋/〈尾上温泉 旅館 紅鮎〉(滋賀・尾上温泉)

内田有美 イラスト

湖面に浮かぶ竹生島(ちくぶじま)を眺めて食す、温かい奥琵琶湖の冬の風物詩

湖北の鴨はかつて徳川家にも献上された名物。「その伝統は脈々と受け継がれ、鴨すき鍋は郷土料理として今も愛されています。たっぷりの鴨肉や軟骨を叩き込んだつくね、レバーやハツまで様々な部位を、砂糖と醤油を回し入れただしでサッと炊き、卵を絡めると声も出ません。“鴨ってこんなにおいしかったの⁉”と、それまでの概念が覆されます」

逸品

取り回し鉢/〈村のホテル 住吉屋〉(長野・野沢温泉)

内田有美 イラスト

何度でもリピートしたくなる、山の湯宿に伝わる昔ながらの祝膳料理

天然記念物の麻釜(おがま)前に佇む料理旅館。「信州の素材を生かした会席料理と、江戸時代から続く郷土料理“取り回し鉢”の2本立て。ジャガイモを極細に刻んだシャキシャキのいもなます、皮付き小芋の塩煮芋、きくらげ山家煮などの、素朴ながらメリハリのある味つけや食感は、ご飯やお酒の供にぴったり。何度食べても、また食べたくなってしまいます」

飯/麺

おにぎり/〈山ふところの宿 みやま〉(宮城・鳴子温泉郷 川渡温泉)

内田有美 イラスト

主人一家が丹精込めた米の旨味が沁みる自家製味噌を塗った焼きおにぎり

山里に佇む一軒宿でいただくのは半径数kmでとれた食材による心尽くしの料理。「米はもちろん自家栽培。ササニシキの小ぶりなおにぎりは頬張ればホロリとほどけて、噛むほどに旨味甘味が湧いてきます。もちろん、ここに至るまでの料理も秀逸。里山の食材と伝統の食文化に育まれたものなのに、どこか洗練されている。玄人好みの味わいです」

酒/飲料

湯田川温泉酒/〈九兵衛(くへえ)旅館〉(山形・湯田川温泉)

内田有美 イラスト


温泉に浸して発芽させた「芽出し米」で仕込む純米大吟醸と生酛(きもと)純米

江戸中期に創業した庄内屈指の老舗。「料理へのこだわりがすごい美食宿で大のご贔屓(ひいき)。その夕食と一緒に湯田川温泉を挙げて取り組んだ〈湯田川温泉酒〉を楽しみます。温泉街の外れにあるお米専用の温泉は、地元の農家さんがお米を漬けて発芽を促すもの。こうして芽出しした酒米を地域で田植えして収穫し日本酒に。キレイな飲み口が魅力です」

朝食

卵料理/〈arcana(アルカナ) izu〉(静岡・天城湯ヶ島温泉)

内田有美 イラスト


調理法も組み合わせる素材も自由自在。卵料理の即興感に朝から心が弾む

糸井佑磨シェフ自ら料理人とともにカウンターに立って卵を料理するスペシャルな朝ご飯。「オムレツ、スクランブルエッグ、ポーチドエッグなど好きなスタイルをオーダーして、野菜などのトッピングも選びます。同じ調理法や具材を選んでも即興で盛り付けを変えるから、一つとして同じビジュアルはなし。作り手も食べ手も楽しんでいる感じが素敵」

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