「カッコよくてかわいい、“女の子の神”になる」。ガーリーな感性とDIY精神を宿すアイドル〈diig〉

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text & edit: Tsuyachan

かわいい”は、もはや誰かに向けて作られるものじゃない。自分の理想のかわいいをそのまま形にする。121日発売のBRUTUSアイドルって?」特集では、そんな自由なDIYの精神によって、新たなガーリーの潮流を生み出す3組を取材しました。その中から、〈diig〉の本誌には載せきれなかったインタビュー全文とアザーカットをウェブ限定でお届けします。

カッコよくてかわいい、“女の子の神”になる。

「カラフルでフリフリレースというガチのアイドルって感じじゃない。私たちはリメイク中心の衣装で、こういうのがやりたかったんだよねって思えて嬉しい」(未紗)

「アイドルっぽくなくていいなって。他と同じことしていても埋もれちゃうし」(瑠香)

サクライケンタが総合プロデュースし、かてぃ(Haze)がビジュアルプロデュースを務め、昨年デビューした〈diig〉。新しいガーリーな感性を打ち出すグループとして、女性ファンからの支持を急速に高めている。

既存のアイドルらしさから距離を置く世界観は、楽曲にも共通している。プロデューサーのサクライケンタをはじめ、小南泰葉や諭吉佳作/men、帰国子女といった面々が手がけるサウンドはユニークで、フェアリーな中にわずかな毒や闇も感じられる。あまりの共感に、ライブ後泣き出すファンもいるそう。メンバーは口々に、〈diig〉を「信仰されるグループにしたい」と語る。

「あまりアイドルシーンのことをよく知らなくて。私たちは、ただ女の子の神になりたいんです。心の距離は近いけど、存在としては遠くて手の届かないようなグループになる。それが信仰されるということ」(シノちゃん)

ただ、結成当初はお互いに空気の探り合いだったという。瑠香は、「初対面では、各々の自我が強すぎて絶対に喧嘩しそうと思った(笑)」と語る。

その後、ダンスや歌を皆で合わせていく中、逆境を乗り越えていくことによって少しずつ5人の仲は深まっていった。アイドル経験のないメンバーばかりだったため、とにかくまずは訓練を重ねていったという。しかし、既存のアイドルのダンスにとらわれない斬新な振付を志向しているため、なかなか習得するのが難しい。

「サクライさんは、“このリズムでとってほしい”っていう動画を送ってくるんですよ。足と手で拍子の説明をするんですけど、分からなくて。“こうですか?”と撮って送ったら“うーん、違う”ってなって、また説明が足された動画が送られてくる。それをとにかく繰り返していきました」(未沙)」

曲もMVも“唯一無二”。その源泉にあるのは、5人の個性

メンバーは、デビューシングルの「vanilla」を初めて聴いたとき、かわいすぎて言葉にならないほどの感動を覚えたそう。ただ、今まで聴いたことのないアイドルソングだからこそ、これもまたレコーディングの難度は高かった。それ以来、新曲のたびに苦労を重ねている。

上達している実感はあるかと尋ねると、未沙が「毎回、新曲のたびにハードルをクリアしてできるようにはなっているんだけど、次にまたさらに難しい曲がくるから、上達してる実感はないかも」と笑う。どんなアイドルもやっていない振付、聴いたことのない曲だからこそ、プロデューサーからの一方的な指導だけでなく、メンバーから出てくる表現の工夫が必要だ。

〈diig〉の世界観を語る上で欠かせないMVについても、メンバーが意見を出していくことが多い。「neon」のMVで、衣装を制服に指定し、映像の質感を提案したのもメンバーだ。「errorrrrr」のMVでは、シノちゃんが私物で皆のスタイリングを手がけた。

5人に宿る美的センスの源泉をひもといていくと、個々の多様な趣味にたどりつく。皆が個性派で、見事にばらばら。emptyworldoldheaven2000名義でDJ活動もしているシノちゃんは、エッジの立ったものが好き。「私は目立ちたい。流行りのものは好きだけど、流行りのものにはなりたくなくて。そういった矛盾するギャップの組み合わせが好き」

未沙は、レトロ要素を今っぽく料理する。「平成が好き。Y2Kじゃなくて、モーニング娘。さんとかガチの平成。YouTubeで昔のドラマとか見るし。以前は、子ども服とかの平成女児系が好きだった」。

メンバーに「たまにモコモコのパジャマとかで現れるよね(笑)」と言われるさらも、一風変わった感性を持っている。「アニメのキャラクターが好き。ダサい色遣いとか」

瑠香は、中華趣味を語る。「私は中華系の女の子が好きで。狐顔の強い感じ。上海で活動する元〈SNH48〉のキクちゃんの顔がめちゃくちゃタイプで。それをきっかけに中華系が好きになった」。

この中にいると、唯一の王道アイドル路線を好むなのはは異色に見えて面白い。「ぬいぐるみやキャラクターとか、子どもっぽいものが好きです。フリルとかも大好き。皆の趣味とは正反対なんですよ。最近は、(絵本の)ノンタンが好き」。

これだけのばらばらな個性が組み合わさることで、〈diig〉というグループの斬新な表現が生み出されている。

メンバーは左から、なのは、瑠香、さら、シノちゃん、未沙。

クールに見えて、内側は灼熱――信仰されるグループの正体

一見クールそうに見える面々だが、話していくとどんどん熱いエモーションが迫り出してくる。最後に「信仰されるグループって、つまりどういうアイドルなのか?」と訊いてみた。

「かわいいんだけど、本質的にはカッコいいでありたい。私たちはメンバー全員がめちゃくちゃ熱い想いを持ってやっているけど、今はそれが半分も伝わってないと思う。もっともっと想いを出していきたいです」(瑠香)

「そもそも、私はアイドルをやっている自覚すらなくて。ただただ、カッコいいものを見せたいって気持ちでやってる。ライブが終わったら、お互い白目を剥くくらいの熱量を感じさせるパフォーマンスがしたいんです」(シノちゃん)

新しいガーリーな感性に満ちている一方で、芯は熱くて泥くさい。diigは恐らくこれから、アイドルシーンの枠を軽々と飛び越えていくだろう。その始まりの瞬間を、今私たちは目撃しているのかもしれない。

diig

でぃぐ/サクライケンタが総合プロデュースする5人組グループ。かてぃが手がける衣装も注目を集め、女性ファンを中心にライブシーンで盛り上がりを見せる。12月21日に東京・青山の〈月見ル君想フ〉で自主イベントを開催予定。

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