ミニマリズム、ポップアート、ニューペインティングなど、かつてはさまざまなムーブメントが花開いたアート界だが、「関係性のアート」を最後に、もはや出尽くした感がある。
21世紀に入ってからは新しいテクノロジーを使った表現が見られるとはいえ、コンセプトが貧弱なものが少なくない。「アートとは何か」という根源的な問いを下敷きにした、骨太で知的な作家や作品の出現が期待される。
NFTアート
Non-Fungible Token(代替不可能なトークン)技術を使ったアート。その特性上、無限に複製可能なデジタルアートの唯一性を、ブロックチェーン技術を応用したNFTで担保する。マーケットの要請によって開発された「本物であることのお墨付き」だが作品の価値とはもちろん無関係。
アーティストコレクティブ
ヴェネチア・ビエンナーレ2022で日本館代表となったダムタイプや、過激な作風で知られるChim↑Pom from Smappa!Groupなど、メンバーが個人的活動も行うアーティスト集団のこと。「ゆるやかな連帯」は音楽など他ジャンルでも流行していて、今後も増加することが予想される。
『ドクメンタ15』で芸術監督を務めたインドネシアのルアンルパは、アーティスト、キュレーター、編集者、アクティビストなど個人がさまざまな顔を持つコレクティブだ。
SEA
Socially Engaged Art。社会的問題や課題に取り組むのにアートの手法を使う社会関与型芸術。素晴らしい事例もあるが、そもそも玉石混交で石の方が多い現代アートの世界では、SEAもその例に漏れない。
2022年開催された『ドクメンタ15』はほぼすべてがSEAで、評価が分かれた。PC(political correctness)、つまり政治的正しさを求める傾向と重なる。
シュルレアリスムの復権
2021年にNYのメトロポリタン美術館で開催され、2022年ロンドンのテート・モダンに巡回した『国境を越えたシュルレアリスム』展や、“忘れられていた”女性シュルレアリスト作家を多数紹介した2022年のヴェネチア・ビエンナーレ本展など、シュルレアリスムが脚光を浴びている。
後者の展覧会名は、シュルレアリストの画家レオノーラ・キャリントンが描いた絵本『The Milk of Dreams』から採られていた。アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』から100年となる2024年にはパリのポンピドゥー・センターでもシュルレアリスム展が開催される予定。