時代の空気をいち早く感知しながら、多彩なアプローチで消費者の心を捉え、行動へつなげていく広告。ライフスタイルや価値観が多様化する中、広告に求められることも大きく変わろうとしている。
コマース・エニウェア
少し前の広告モデルは“CMで認知→ウェブコンテンツで理解→購買”という流れが定番だった。しかしそれを大きく変えたのが、TikTok。「興味からズドン」というキャッチコピーは象徴的で、今や興味を持つ場所が買い物の場所であり、ライブ配信者が売り手にもなる時代。広告と売り場の一体化が進んでいる。
ブランディングのエクスペリエンス化
コマース・エニウェアの流れで、広告は情報提供から体験へと変化しつつある。カンヌライオンズ2023の出品作でユニークだったのが、ハイネケンの「The Closer」。デジタルデバイスの栓抜きなのだが、ビールを開けると周辺のパソコンが自動的にシャットダウン。ワークライフバランスはいかにあるべきかという議論をよそに、広告を体験化してインパクトを与えた。
生成AIクラフトとヒューマンクラフト
広告表現において、生成AIによるクラフトが注目される一方で、人間だからできることも相変わらず重要で、対立するのではなく、お互いが補完し合って成長する流れは今後も続いていくはず。今年のカンヌライオンズで話題になったナイキの広告は、女子テニス選手セリーナ・ウィリアムズの強さやプレーの進化を、AIが膨大な試合データから解析。人間の発想とAI技術を掛け合わせることで、17歳と35歳のセリーナによる夢の対戦を実現させた。
身の丈サステイナビリティ
社会課題解決をブランディングの一環で行うのは近年のトレンドだが、企業の重荷になっては持続可能といえない。利益を得て社会課題解決も目指す身の丈に合ったサステイナビリティが見直されている。米国の通販会社doordashは、女性の性をオープンにする活動のために、花束とセットにしたバイブレーターを発売しヒットさせた。通販会社らしい商品開発で、利益を上げながら社会貢献した事例だ。