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作家・鈴木みのりが解説。明日がわかる「ジェンダー・人権」の最新時事用語事典

ステップアップを成し遂げるためには、スキルを身につけることと同じように、新しい知識を手に入れることも大切。そこで、作家・鈴木みのりさんに、ちょっと先の未来を見据えて「ジェンダー・人権」の最新キーワードを解説してもらいました。新たな学びは、新たな言葉を知ることから。リスキリングの武器となる、最新時事用語集です。

本記事も掲載されている、BRUTUS「大人になっても学びたい!」は、2023年10月2日発売です!

illustration: Kei Hagiwara / text: Ikuko Hyodo / edit: Ichico Enomoto

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今年公表された「ジェンダー・ギャップ指数2023」によると、日本は146ヵ国中125位で、調査開始以来最低の順位に。一方、差別や格差の構造は複雑化もしている。私たちが、今知るべきこと。

アカウンタビリティ

もともとは経営学の用語で、「説明責任」の意。例えば米国で、非白人の居住地域の犯罪率の高さを個人や属性にのみ帰す偏見に対し、人種主義による、格差を生む差別的な社会の教育、福祉などの課題だと指摘されてきた。人権意識に基づいて問題の本質を追究する、このような議論の流れでもアカウンタビリティという言葉が使われるように。日本でよく見る謝罪会見のような、謝ること自体が目的化したり、過失側がまず名誉回復を期待したりするのではなく、原因の精査と具体的な改善策の提示が求められる。

社会的な望ましさ

ポリティカル・コレクトネスの日本語への置き換え。今や「ポリコレ」とカジュアルに呼ばれ、「ポリコレ棒」など揶揄的表現も生まれているが、この言葉に限らずカタカナ化で形骸化するのは、よくあること。もう一度、「まずは社会での不均衡を見直そう」という意味へと言葉を引き戻そうとする、重要な実践だ。自分たちの言葉への言い換えは、英語の歴史的・文化的な支配性の強さを問い直す取り組みともいえる。

ポリティカル・コレクトネスからどこへ
ハン・トンヒョン氏が本書で「社会的な望ましさ」と置き直し、再定義。

インターセクショナリティ

米国の白人中心的なフェミニズム運動に対し、奴隷制の歴史を有する社会で生きる黒人女性への差別が見えにくくなるという課題を指摘してきた、ブラック・フェミニズムから生まれた概念。直訳すると「交差性」だが、そもそも差別は一つのカテゴリーに分けられず、人種、国籍、性別、階級などさまざまな属性が交差したところで起きているもの。ただし、差異にのみ着目し、属性を細分化する分断ではなく、複合的な差別に目を向けながら、同質を捉えて共闘するための考え方。

ルンブン

インドネシア語で「米蔵」の意味。余剰分の資源を地域社会に再分配する風習があり、昨年ドイツで開催された現代アートの祭典『ドクメンタ15』のコンセプトにもなった。資源の再分配と持続性の模索という理念は、一部の強い女性が経済的に成功するような取り組みを課題解決と見なさない、フェミニズムとも通じる。欧米中心の資本主義や権力集中を問い直す意味でも、「社会的な望ましさ」と同様、現地の言語で表現する意義が。

ドクメンタ15のアイデア出し
『ドクメンタ15』の展示。アイデア出しのプロセスが可視化され、その過程も共有資源となっている。

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