Read

Read

読む

頼りになるマンガ Vol.8:しばらく難しそうだから、 海外気分を味わいたい。

人は悩みを抱えたり困難に遭遇したりすると、藁にすがったり猫の手を借りたり、思いも寄らぬ行動に出るらしい。すがられる藁も動員される猫もいい迷惑だろうに。それならいっそ、マンガに頼ってみませんか。コンシェルジュが厳選した「頼りになるマンガ」!

Illustration: Ken Hamaguchi / Text&Edit: Keiko Kamijo, Akio Mitomi, Saki Miyahara, Kaz Yuzawa

連載一覧へ

しばらく難しそうだから、
海外気分を味わいたい。

『ロボットのくにSOS』たむらしげる/著

推薦者:SYO

童心に返って、異世界に思いを馳せてみよう。

コロナ禍で、海外旅行が遠くなってしまった昨今。そんな時こそマンガの出番です。人気イラストレーターのたむらさんが描く世界は、温かくファンタジックで、別空間にトリップした気持ちになれます。

中でも、ロボットたちが暮らす地下帝国への冒険が描かれる本作は、冒頭から末尾までワクワクの連続。海外テイストも感じられる博士の家に始まり、目の前に現れるのは巨大なキノコの森や、ぴかぴか光るヒトデが空を舞う海。

現実を超えた「ここでしか見られない」風景が、そこにはあります。いわば海外気分“以上”のものを味わえるわけです。また本作は大判のマンガ絵本の形式となっており、家族みんなで一緒に読めるのも◎。しかも、ものすごく泣けるんです……。

『全て緑になる日まで』大島弓子/著

推薦者:青柳いづみ

光と緑がつまった世界が目の前にあります。

レージデージは、ランドレス王国に住んでいる。ほんとうには存在しない、小さな国。ある日彼女の前に突然現れる謎の少年トリステスの夢は、晴れた日の敷石に寝てみること、日曜日の朝にお掃除すること、ずっとねまきで過ごすこと、おふろでごはんを食べること……そんなまるでありふれた、なんでもないようなことが、今現在の時間では素晴らしいことに思える。

どこかへ出掛けなくたって、このページをめくっている今こそ特別な瞬間を生きていると感じられる。光と緑がつまった世界が目の前にあります。さっそく今日の夜はおふろにアイスを持ち込んでみよう。(レージデージに限らず、女の子達の思い違い、思い込み力の強さというのはとても美しいものです)。

『僕らの地球の歩き方』ソライモネ/著

推薦者:兎来栄寿

世界一周旅行で見つめ直す自分の人生。

家族にもカミングアウトできない、同性のパートナーとの世界一周旅行を描く物語なのですが、とにかく各国の名所やグルメが緻密に臨場感たっぷりに描かれており、実際に世界一周旅行を楽しんでいるような気分に浸れます。

単行本1巻の時点ではタイ、インド、ジョージアを巡り、その後も北欧でオーロラを見たり、ローマでコロッセオに行きジェラートを食べたりと、2020年に発売された作品の中で、旅行が制限されている中、最も海外旅行の気分を味わえること請け合いの内容です。

そして世界中を巡る旅やその中での出会いを通して自分自身の人生、そしてパートナーとの関係を見つめ直し切り拓いて成長していく内容にもなっており、強く優しく心に響く作品です。

『乙嫁語り』森薫/著

推薦者:近西良昌

綿密な取材と迫力ある画力で表現される異文化。

森薫先生の圧倒的な画力で表現されるシルクロードの人たちの生活。細かく描き込まれた絨毯や衣装の絵柄を見ているだけで、中央アジアを肌で感じられると思います。森先生はこの作品を描く時に、文献などで、かなり現地の様子や歴史を調べられたそうです。

その分、舞台の空気感が伝わってくるような臨場感、躍動感があります。緻密に絵を描き込んでいるので、単行本の刊行ペースは1年に1回。しかし待った分だけ満足させてくれる作品です。心温まるストーリーはもちろん、その土地の民族の暮らし方や、結婚生活の様子など、日本での日常では考えられない生活を知ることができるので、まるで海外旅行をしたような異文化体験ができることでしょう。

連載一覧へ