『しっぽの声』夏緑/原作 ちくやまきよし/著 杉本 彩/監修
推薦者:兎来栄寿
生き物を飼うことの残酷な現実。
私自身まさに最近人生で初めて自宅で犬を飼い始めたのですが、その前に読んで肝に銘じたのがこの作品。タイトルと表紙はかわいいのですが、内容は「生き物を飼う」ということに付随する残酷な現実がありありと描写されています。
読んでいて辛くなる部分も多いのですが、命と向き合う際に覚悟して知っておかねばならない大事なことでもあります。コロナ禍によって癒やしを求めてペットを飼う人が急増していますが、軽い気持ちで飼い始めた結果悲惨な結末を迎えてしまうケースも多いそうです。
この作品を読んだうえで「自分は絶対に大丈夫」「何としてでもペットを飼いたい」と思える場合は、ペット可の住居への引っ越しも検討すると良いのではないでしょうか。
『性悪猫』やまだ紫/著
推薦者:青柳いづみ
紙の上からでも撫でてしまいたくなります。
動物が生きている時間は、人間のように直線に進むのではなく、円環をなして閉じているそうです。今日は何を食べたとか、明日はどこへ行こうとか、人間がその機能を持ち考えてしまう面倒な次元に動物はいないらしい。なんてうらやましい。
性悪猫はそんなこと関係なく、うれしいと泣いたり、口惜しかったり哀しかったり、恋をして子どもを生んだり、抱いていてよとせがんだり、そして「せけんなど どうでもいいのです お日様いっこ あれば」としたり顔で言ったりする。うらやましいなんて言うと、直接聞いてみたこともないくせにと言い返されてしまいそう。
猫の描写が美しく、紙の上からでも撫でてしまいたくなります。引っ掻かれないように気をつけて!
『猫奥』山村東/著
推薦者:岩下朋世
猫好きなツンデレ主人公と猫の交流にほっこり。
大奥における管理職の一つ、御年寄を務める滝山。実は大の猫好きの彼女だが、生来の厳しい顔つきと内心を明かすのが苦手な性分もあって、「デレ」の姿を素直に見せられない。
そのせいで周囲からはすっかり猫嫌いだと誤解され、今さら猫を飼いたいとも言い出せない。それでもなんとか猫を愛でたい、仲良くなりたい。そんな滝山と大奥の猫たちのすれ違いがちな交流を描くコメディだ。猫もかわいいが、読んでいるとそれ以上に滝山の方がかわいく思えてくるかもしれない。
大奥という外部から隔絶された環境にあって、猫をはじめとしたペットがどれほどの癒やしになるか。猫の愛を求めて右往左往する滝山の姿からは、そのことがつくづく実感されてくるからだ。
『今日のさんぽんた』田岡りき/著
推薦者:近西良昌
犬派のあなたにおすすめする、お散歩マンガ。
私は個人的に犬派。私もマンション暮らしなので犬は飼うことができず、日々犬に触りたくてしょうがないという気持ちを抱えています。そんな叶わぬ思いを紛らわすように、この作品を読んで犬と散歩している気分を味わっているんです。
これは犬との散歩の風景を描いた、ほのぼのとしたストーリー。絵柄も素朴でかわいらしい。散歩中、飼い主はひたすら犬に話しかけています。登場する犬はちょっとドライな性格で、心の声で飼い主に突っ込んだり、呆れたり。その絶妙な掛け合いに思わずくすっと笑ってしまいます。
飼い主の犬への愛情をひしひしと感じますし、長年の付き合いである2人の関係性も羨ましく思います。私と同じ犬派の方に薦めたい一冊です。