『コーポ・ア・コーポ』岩浪れんじ/著
推薦者:トミヤマユキコ
ろくでもないようでいて、かけがえのない人生。
貧乏アパートで一人の住人が首吊り自殺をするエピソードから始まります。いきなり高カロリーだな!と思いながらも、心を掴まれてしまう筋運びはさすがです。
隣の部屋に住んでいた人が、自分が借金を断ったから死んでしまったのではないかと気に病むのですが、実は住民全員が借金を断っているんです。でも、その場では誰も本当のことを言わない。なんだか残酷ですが、それがここでの常識なんだとわかった瞬間、彼らの世界が落語に出てくる貧乏長屋のような、リスペクトすべき異世界に思えてきます。
狭い長屋を舞台に繰り広げられる独特な人間模様は、粘土を感じさせる絵と相まって、一度読んだら忘れられません。珍味のような面白さを味わいたい方に。
『竜女戦記』都留泰作/著
推薦者:岩下朋世
壮大な設定と魅力的なキャラクターに脱帽。
架空の国「陀国」を舞台に、一人の女性が天下を取る道のりを描く和風歴史ファンタジー。文化人類学者でもある作者が和製『ゲーム・オブ・スローンズ』を目指して構想しただけに、中世から近世の日本を参照して作られた世界観は奇想に溢れつつもリアリティと奥行きを感じさせる……のだが、ここで言っておきたいのは、独自のユーモア溢れる人物造形の魅力である。
前作『ムシヌユン』でもコミュニケーション能力絶無の主人公の奇行が目を引いたが、そのセンスはここでも健在。主人公・たかのメンタルの弱い夫の情けなさもたまらないが、彼女を天下取りへと誘う全裸の怪老人・勘兵衛の存在感がすごい。ゆるさと壮大さの不思議なコンビネーションは唯一無二だ。
『ブランクスペース』熊倉献/著
推薦者:近西良昌
マンガ読みにこそ読んでほしい、鮮烈な才能。
作者の熊倉献さんは、知る人ぞ知る天才マンガ家。デビュー作の『春と盆暗』に続く、彼女の久しぶりの単行本がこちらです。この作品にも、ほとばしる才能が随所に溢れています。
描き方、題材も素晴らしく、読んでいて想像力が掻き立てられます。現実離れしたストーリーなのに、本当にこの能力を誰かが持っているかもしれないと思わせられる説得力。話を読んだあと改めて「ブランクスペース」というタイトルを見返すと、ストーリーと密接にリンクしていることがわかり、よく考えられたネーミングだと唸りました。
今後絶対話題になると思いますし、そうなるために多くの人に薦めていくことが私の使命。たくさんマンガを読んできた人にこそ読んでほしい一冊です。
『モンキーピーク the Rock』志名坂高次/原作 粂田晃宏/著
推薦者:川村豪
今、一番実写映画化してほしい作品です!
スピーディな展開が読者を飽きさせない作品です。前作同様アクション性が非常に高く迫力もあり映画向きのストーリーなので、今、一番実写化してほしい作品です!
猿との戦いのさなか、極限状態の人間の醜さや強さ、背後で暗躍する組織などが、とても魅力的に描かれています。残虐な猿、人間関係、自然の恐ろしさなどがあまりにリアルに描かれていて、緊迫感溢れる展開に目が離せません。
前作『モンキーピーク』は山が舞台だったのですが、私自身、山が好きなので入り込めました。前作と本作は話がつながっているので、ぜひ通して読んでください。連載開始から早5年、当初からリアルタイムで夢中になって読み続けている作品なので、これからも応援します!