企画立案から予算管理、そして完成した作品を世に送り出すまで、映画製作にまつわるさまざまな仕事を担い、作品の全権責任者ともいえるプロデューサーは、沁みる映画をどう捉えているのだろう?これまで数々の作品を手がけてきた佐藤さんは、こうすれば沁みるという公式はないと話す。
が、佐藤さんが手がけた『百円の恋』は、中国の人気俳優ジャー・リンの監督・主演で『YOLO 百元の恋』としてリメイクされ、興行収入は日本円にしてなんと約740億の大ヒット。
自堕落な生活を送っていた一子は、100円ショップで働き始めたことをきっかけに中年ボクサーと恋仲になり自身もボクシングを始める。足立紳のオリジナル脚本を武正晴監督が映画化。痛いヒロインを演じた安藤サクラの演技が沁みる。
「オリジナル版へのリスペクトが感じられたし、ジャー・リンさんの本気度が伝わってきました。それは我々が何度観ても胸を熱くする安藤サクラさんの演技が中国の作り手たちにも沁みたからだと思います」プロデューサーとして、今だからこんな映画を作ろう、と考えることはあるのだろうか。
「時代のムードや、観客が何を求めているのかはもちろん考えますが、そこから起算して企画を立ち上げるというわけではないですね。企画時から公開までに、状況が変わってしまうこともありますから」
例えば『僕たちは世界を変えることができない。』は、平和ボケしている若者たちがアクションを起こすことで世界が違って見えるという、現代の空気を背景に企画した作品だが、公開待機中に東日本大震災が発生。世の中は日本をみんなでなんとかしなきゃ、というモードに。一筋縄ではいかないが、大切にしているのは「観客の心の琴線に触れるには、まず自分の琴線に触れるかどうか。そして作り手が作品を通して何を残したいか。それが大事だと思います」。
そんな佐藤さんの沁みる映画は『スタンド・バイ・ミー』。『雑魚どもよ、大志を抱け!』の足立紳監督も大好きな一本というのも納得だ。
カンボジアに小学校を建てようとする大学生が厳しい現実を目の当たりにする。同名の体験記を深作健太監督が映画化。
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地方の町に暮らす平凡な小学生7人の青春群像劇。ワケありの父親を演じる永瀬正敏など、大人パートでも魅する。相米慎二に師事していた足立紳監督が20年以上前に褒められた脚本を基に作り上げた念願の企画。
佐藤現さんが思う、「沁みる」の正体
作り手も観客も熱くするもの。
