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イーストロンドン発のストリートフード「トースティ」。神宮前〈ディーニーズ〉が日本を幸せにする日

〈DEENEY'S〉は2012年にイーストロンドンのストリートマーケットから始まったお店。看板メニューのMACBETH(マクベス)は、スコットランドの伝統料理であるハギスを挟んで、鉄板の上でプレスしながら作るトースティ(ホットサンド)のことで、ロンドンのベストサンドウィッチにも選ばれた。この本場の味が東京・神宮前で食べられると聞いて、早速食べに行ってきた。

photo: Asuka Ito

日本ではあまり知られていないが、ロンドンで人気のトースティ。中でも〈DEENEY'S〉のマクベスは特別だ。外はサクッとした歯触りのパン、中はとろけるチェダーチーズやキャラメルオニオン。決め手はスコットランドの伝統料理「ハギス」の独特な風味とスパイス。

一度食べたら間違いなく病みつきになる。2014年に現地でこれを食べて、その味に惚れ込んだ長谷川容子さんが、本国のオーナー兼シェフのキャロル・ディーニーに直談判し、東京・神宮前にお店をつくってしまった。

プレス器も本場から譲り受けたもの。隠し味を仕込んだバターをパンに塗ったら、鉄板に押し付けて、表面をカリッと焼き上げる。
看板メニューの「マクベス」¥1,080。ホットサンドをトースティと呼ぶ。チェダーチーズに混ざっている挽き肉のように見えるのがハギス。

ロンドンの味、スタイルをそのまま日本で再現するために、あえてフランチャイズの形態にこだわり、味だけでなく営業スタイル、看板デザインからメニュー名まで、何から何まで忠実に再現することに決めた。しかし、水も食文化も違う日本で簡単な話ではなかった。材料の調達だけでなく、同じような食感や味わいを得るためには何度も何度も試作を重ねることに。

ハギスには牛肉やオートミール、玉ねぎやスパイスとともに、欠かせないのが羊の内臓。イギリスからハギスを輸入することができないため、独自でハギスの材料を調達するルートを開拓した。結果、オリジナルを保ちつつも食べやすい味わいに。さらに、全粒粉のパンは開発に一番時間をかけた。

ただおいしいパンを探すのではなく、口に運んだときにロンドンの味を再現できていなければ意味がない。試行錯誤を繰り返した末に、ようやく納得のいく本場の味わいにたどり着いたという。

グランドメニュー以外にも、本店がやっているマンスリーメニューを、1カ月遅れでやっていくことに。

トースティにはレディマクベス(ベジタリアン)、ヴィーガン レディをはじめ全7種。バーガーメニューやイギリスらしいブレックファストメニューのほか、マンスリーメニューなどもラインナップする。

当初はキッチンカーの形態で広尾のナショナル麻布スーパーマーケットの店頭でお店をスタートし、そこに通う在日外国人たちから支持され、口コミで広がった。その後も、ロンドンのマーケットのイメージに近い、青山のファーマーズマーケットに出店。徐々にファンを増やしていった。

神宮前にある現店舗は、2020年7月にオープン。ロンドン本店のモダン・ブリティッシュな雰囲気を再現するために、オーセンティックなチェック柄やユニオンジャックは使用していない。

実は長谷川さん、〈DEENEY'S〉に出合ったときに食を超越してストリートマーケットのカルチャーを丸ごと輸入し、日本に根付かせたいと考えたんだそう。土日になると道を封鎖して、露店やキッチンカーで埋め尽くされる。食べ歩きをしながらオシャレな店でショッピングする。フラワーマーケットでは、抱えきれないほどの花束を持ち帰る男性とすれ違ったり、近隣の公園でのんびりしたり。日本の縁日とはまた違った景色は、魅力に溢れていたという。

だから、東京のお店も本国同様に、路面店とキッチンカーによるマーケット出店の両輪で運営している。最近、街にもキッチンカーが増えてきていることを喜びつつも、夢を抱く。例えば、衰退しかけている商店街とタッグを組んで、ストリートマーケット形式で街を活性化させるなど、できることは多いと語る。

2023年秋には隣接する明治公園が拡張リニューアルする予定で、地図で見ると国立競技場と〈DEENEY'S〉で公園をサンドイッチするような位置関係になるという。今後は、渋谷区イーストサイドのランドマークになりそうだ。