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コロナ禍で話題になった“野菜ダンス”。ダンサー・アオイヤマダが教えてくれた、ダンスのはじめ方

一生ものの趣味をはじめる。休日の過ごし方は、働き方と同じくらい重要。楽器にスポーツ、アウトドア。かつて習っていたもの、興味はあってもなかなか手が出なかったものも。心身を癒やし、毎日の活力をくれる“パートナー”のような趣味を。

Photo: Kazuharu Igarashi / Text: Yoko Hasada / Edit: Emi Fukushima

教えてくれた人:アオイヤマダ(ダンサー)

生活の中の動きを
オーバーに繰り返す。

「ダンス」と聞くと、まずはスクールに通い、基本ステップを習得しなければならないというイメージがあるが、アオイヤマダさんのダンスはルールやジャンルにとらわれない自由なスタイル。

コロナ禍で話題になった、歌謡曲に合わせて野菜と踊る“野菜ダンス”は「日常生活の延長にダンスがある」というアオイさんの考えから生まれた。

「家族に会えない期間、おばあちゃんから頻繁に連絡をもらいました。元気に過ごしていることを伝える“お手紙”の代わりに、実家から送られてきた野菜で踊ったのが野菜ダンスのきっかけ。
ダンスと聞くと、広いフロアで様々な技を交えてカッコよく踊ることを想像しますが、それは私にとっても難しいことです。

私の考えるダンスに、難しい技術は必要ない。生活の中で動きを見つけて、繰り返したりバラバラな動作をつなぎ合わせたりするだけでOK。
例えば、音楽に合わせて椅子に座ったり立ったりするだけでもダンスになります」

ダンスは、「真似」からはじまる。

人間観察が好きだという、アオイさん。
「この光景に音楽を乗せたらダンスになるかも」という生活の動きをストックして、真似することからインスピレーションを膨らませている。

「小さな子が喜んでいる姿、鳥の求愛、湖でカヌーを漕ぐ動作、歯磨き、片づけ……なんでも踊りになる。
初めて踊る人は、動きを真似ることからはじめるのがいいかもしれません。その動きをオーバーにしたり、速度を変えたりするだけでレパートリーが増えます」

そして、音楽に合わせて真似した動きを反復すればひとたびでダンスになるのだ。さらにステップアップして踊りたいとき、どのように考えを組み立てると踊りやすいのだろうか。

「私の場合は必ず、自分の中でストーリーを作ります。まず、シーンやテーマを決める。時間帯、状況など細かく設定するんです。そして、喜怒哀楽のような感情の起伏をストーリーにつけます。悲しいのか嬉しいのか、感情でダンスは変わる。

あと、主役を自分ではなくて、別のものに置き換えると恥ずかしくなく踊ることができます。例えば掃除中なら掃除機、料理中なら料理道具、出勤の行き帰りにある電柱や店など身近なアイテムを主役にするんです。
何も決まっていない状況で踊るよりも、自分から制約すると踊りやすくなると思います。

音楽は好きなもので大丈夫です。衣装も大事で、そのときの気分に合ったものをセレクト。私は好きな写真をプリントした特注のレオタードで踊るのにハマっています」

いろんな動きを織り交ぜて踊らなければと思うとうまくいかない。しかし、自分の生活をヒントに好きな音楽をかけてみれば、今日からだって踊れるかもしれない。

scene1:
本を読んでいるとき

真剣に読書をする姿からスタート。次第に本の中の主人公に恋に落ちるという設定で、本を好きな人に見立ててチークダンスのように本と体を寄せ合う。
恋心が盛り上がるにつれて回転など社交ダンスのようなステップも。最後は愛おしそうに本を抱きしめた。

scene2:
キッチンでスープを作るとき

スープを作る工程をダンスにアレンジ。引き出しを開けて料理道具を出し、おたまで具材を入れたり混ぜたり、おいしくなるおまじないをかけたりする動きを音楽に合わせてオーバーに。
大好きな野菜スープ、嬉しい気持ちが爆発して最後はジャンプ!

scene3:
昼寝から目覚めたとき

眠気に誘われて昼寝をした午後、ベッドから起き上がろうとするシーン。包まっていた毛布を剥ぎ、まどろみながらベッドの上でゴロゴロ。
体を起こそうとするけれど、また戻ってしまう動きを繰り返し、最後は諦めたようにベッドの上で大の字に。