『Curtis』Curtis Mayfield(1970)
愛と信念のソウルの
オールラウンダー。
この作品はカーティス・メイフィールドのソロ・デビュー・アルバムで、『What's Going On』の1年前、1970年に出ています。カーティスは60年代ずっと、インプレションズのリーダーとして活躍してきて、ついに独立して70年からソロ活動を始めました。
70年代の前半というのは、黒人のシンガー・ソングライターが大いに注目を集めた時代で、マーヴィン・ゲイはもちろん、カーティス、スティーヴィー・ワンダー、ドニー・ハサウェイ。ほかにもボビー・ウォーマックやビル・ウイザースなど、ホントにたくさんの才能に恵まれたミュージシャンが活躍していました。ソウル・ミュージックの新たなる時代の始まりですね。
シカゴ育ちのカーティスは、シカゴのソウル・ミュージックの特徴といわれるホーン・セクションを厚めに使う傾向があり、また、コンガなどのラテン系のパーカションを採り入れたのが早かったです。そしてカーティス本人の演奏の特徴というと、瞬間的に彼とわかる独特のギターと裏声。彼のようなヴォーカルはほかになかなか見当たらない。
カーティスの曲は多くのミュージシャンにカヴァーされていますが、「The Makings Of You」はカーティスがサウンドトラックを手がけた『Claudine』で、グラディス・ナイトが歌うヴァージョンも素晴らしいです。
また、レゲエ界でもカーティスのカヴァーは数多く、有名どころではボブ・マーリィの「One Love / PeopleGet Ready」がありますが、僕はチャカ・ディーマス&プライヤーズによる「She Don't Let Nobody」がメチャメチャ好きなんです。実は30枚の有力候補でもあったんですが、ダンスホールのレゲエは〈cheers pb〉には何となく合わない気がして、今回は見送りました。
また、カーティスは早くから社会意識に目覚めていたようで、インプレションズ時代の「People Get Ready」など、その手の楽曲はかなりあります。このアルバムにも、当時盛り上がりつつあったブラック・プライドを反映した「Miss Black America」という曲が収められています。
side A-3:「The Makings Of You」
この曲は愛している彼女への切ないラヴ・ソングですが、カーティスのあの声で切々と歌われたら、効果てきめんでしょう。もう僕の年では関係ないですが、この夏、ひと夏の恋をものにしたいと思っていたら、この曲を用意しておいたらよさそうな気がします。グッときますよ。