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かっこいい大人が夢中になっているもの。〈STONE ISLAND〉カルロ・リヴェッティ

世界中のかっこいい大人たちは、今何に夢中になり、何に励んでいるのか。国内外で活躍する、〈STONE ISLAND〉会長・カルロ・リヴェッティさんを訪ねインタビューしました。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Itoi Kuriyama

創設初期から関わる〈STONE ISLAND〉の顔

北イタリアのモデナ県にある町、ラヴァリーノを拠点とする〈STONE ISLAND〉。1982年の創設の翌年から関わり、現在会長を務めるカルロ・リヴェッティは、キャンペーンに登場するなど、ブランドの顔と言える存在だ。40年以上にわたるブランドの歩みをまとめた書籍『STORIA: UPDATED』の発売に際しては、東京をはじめとする世界各都市でサイン会を開催し、多くのファンに囲まれた。

「息子のシルヴィオにさまざまな事柄を託しましたし、若いスタッフも育っていますので、ずいぶん楽になりました。今はお世話になっている方々と交流をする仕事が多いですね」

そう語るカルロは要職にあってもまったく威圧的ではない。〈STONE ISLAND〉で揃えた装いについて、にこやかに説明してくれる。

「〈STONE ISLAND〉のアイコンである“プレジデントニット”は、アウターシェルがニット素材で仕上げられています。パンツは穿き心地がいいのでいつもこれ。同じものを10本は持っていますね。本社を構えるモデナを本拠地とするサッカークラブ、モデナFCのオーナーということもあり、インナーはチームカラーのカナリアの色。私のラッキーカラーなんです」

両腕には驚くほどたくさんのブレスレットを重ね着けしている。

「モデナFCのものだったり、旅先で手に入れたり、家族がくれたり。どれも思い出深いので、常に身に着けています」

〈STONE ISLAND〉会長・カルロ・リヴェッティ
年季が入ったブレスレットがたくさん巻かれている手首。「病院で検査をした時に取り外すのを拒否したら、上から包帯をぐるぐると巻かれてしまいました(笑)」。

信念を貫いていれば自然と支持者が生まれる

イタリアの繊維製造業界で名を馳せる企業家一族に生まれたカルロは、幼い頃から自然と服に関心を持ちやがて家業に従事。25歳の時に〈STONE ISLAND〉に出会った。

「当初はイタリアらしいフォーマルなスーツに関心を持っていたのですが、周囲を観察していると機能的で動きやすい服装の方に新しい世代のニーズが高まっていく予感がしていました。誕生したばかりの〈STONE ISLAND〉は、機能性とエレガンスが両立していて、フォルムや染色方法、生地使いなどに革新的なアイデアが満ちていた。きっと今後成功するはずだと思ったんです」

その予測は的中し、『STORIA: UPDATED』の「コミュニティ」の章を読めばわかるように、〈STONE ISLAND〉は1990年代にはイギリスのサッカーファンの間で、2000年代にはアメリカ・カナダのヒップホップカルチャーを中心に人気を博す。

書籍『STORIA UPDATED』
2024年末に発売された書籍『STORIA: UPDATED』。

「変化が激しい流行を追ってしまうと後手後手になってしまいますし、万人受けはまず無理です。私たちは“Lab=研究をし続けること”“Life=日常的であること”という2つを核に、自分たちの信じる道を貫いてきました。周囲に惑わされずに進んでいると、時折流行と一致する場面があり、自然とコミュニティも生まれてきます」

そうして〈STONE ISLAND〉とともに歩んできたカルロ。ミラノ工科大学からの誘いで工業デザインとメンズファッションデザインのマーケティングを15年間教えた経験もあるが、後進の教育もお手のものなのだろうか。

「デザイナーを支える技術者たちに重要性を感じているので、大学ではデザインやスタイリング等ではなく、方法論を教えていました。私の講義は学生の人気投票で1位だったんですよ(笑)。〈STONE ISLAND〉に入社してくれた教え子もいます。一方会社では、問題が起こったとしてもすでに社員たちで解決していて、事後報告が多いんですよね。スタッフから教わる方が多いかもしれません(笑)」

最後に「かっこいい大人」として思い浮かぶ人を聞いてみると、挙がったのは、祖国を代表する名優、マルチェロ・マストロヤンニ(1924〜1996)。

「かっこよくあるためには、場に適した、落ち着いた服装であることはもちろん、考え方や行動の仕方も重要。彼はそうした“かっこいい”生き方をしたと思います」

人懐こく、ユーモラスで、飾らない佇まいでありながら、先見の明を持ち、信念を貫く。そんなカルロは、〈STONE ISLAND〉のファンやスタッフ、大学の教え子たちから、きっと「かっこいい大人」として眼差されているはずだ。

〈STONE ISLAND〉会長・カルロ・リヴェッティ
ビビッドカラーのジップアップのトップに「プレジデントニット」を羽織り、いつものパンツ。すべて〈STONE ISLAND〉で揃えたカルロが、笑顔で南青山にある日本初の旗艦店のドアを開けて出迎えてくれた。