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〈ザ・コンランショップ〉が代官山に初のローカル編集型ショップをオープン!代表の中原慎一郎さんに聞く

1973年にロンドンでスタートした〈ザ・コンランショップ〉。世界のライフスタイルを変えた店が2023年4月、代官山に路面店を開く。「アジアのデザインに焦点を当てる」というコンラン50年の歴史上初の試みを、2022年から代表を務める中原慎一郎さんが語ります。

photo: Norio Kidera / text: Masae Wako

テレンス・コンランの思いを受け継ぐ店

「ザ・コンランショップが目指す姿を一言で表すと“お店上手”です」

そう語るのは中原慎一郎さん。ヒューマンメイドの家具や雑貨を発信する〈ランドスケーププロダクツ〉を1999年に創設し、イームズの家具や民芸の魅力を広めた立役者の一人である。そんな中原さんがコンランショップ・ジャパンの代表取締役社長に就任したのは2022年。

「創業者テレンス・コンランの、経営者としてのルーツは飲食業。人をもてなすことでした。著書の『MY LIFE IN DESIGN』には、“大切なのは、さまざまな才能を駆使して顧客に幸福感を与えること”とある。家具は家具店、器は食器店で売るのが常識だった1973年に、“来る人をもっと喜ばせるには?”と考え、家具と食器と花と本と、レストランまでが同じ空間に並ぶ革新的な店を創造した。

同時代のマリー・クワントがファッションシーンを変え、イームズが家具の歴史を変えたように、テレンスは今で言う“ライフスタイルショップ”という店の形をデザインし、人々の生活を変えたんです」

そんなパイオニアの思いを受け継ぐ店が、2023年4月、代官山ヒルサイドテラスにオープンする。ネットショップ全盛の世の中で、どうしたら来る人を喜ばせられるんだろう。中原さんの答えは、ザ・コンランショップにとって世界初となる「アジアにフォーカスした自主編集型の店」。

コンランショップ・ジャパン代表取締役・中原慎一郎 空間デザインは芦沢啓治
工事中の新店舗を視察中の中原さん。空間デザインは芦沢啓治。

理由は、海外で学んで実力を身につけたデザイナーや、OEMで鍛えられた企業など、アジア各国に次々と優れた作り手が現れているから。テレンスが掲げていたもの選びの基準「PLAIN, SIMPLE, USEFUL(無駄なく、シンプルで、実用的に)」を、アジアで展開したら面白いだろうと考えたのだ。

中原さんには、たびたび行き来していたアジア各国にアンバサダーのような頼れる存在がいる。彼らの協力のもと、代官山店スタッフも現地へ足を運んで買い付けをする体制を整えた。職人や作家に会ってものを選んだスタッフが店頭にも立ち、作り手の思いを使い手に伝えるところまで担うのである。

「哲学が感じられる空間と、その環境を十二分に生かせる人の力。場と人が店のキャラクターを作ることをテレンスは熟知していたし、それがお店上手になる鍵だと思います」

新店舗は、歴史ある建築と人と町とが穏やかに交じり合う代官山ヒルサイドテラス。店内には、テレンスの原点でもあるもてなしの場として、〈櫻井焙茶研究所〉監修のTea Bar〈聴景居〉も。アジアの国ごとに異なるお茶の楽しみ方を提案する。

「テレンスのマインドを大切にしつつ、ここにしかない喜びをちりばめた店を作りたい。“テレンス・コンティニュー”という気持ちです」

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