日常の“隙間”でゆるりと。ジェンダーフリーな都会の浴場、オーストラリア・メルボルンの〈センス・オブ・セルフ〉

日本に来て来て、あの店、このサービス!今回はオーストラリアの気になるサービスを紹介。

photo: Martina Gemmola , Jessica Tremp / text: Mifumi Obata / edit: Hiroko Yabuki

連載一覧へ

3つのポイント

1.女性クリエイターによるミニマルな空間演出。
2.トルコや北欧など多様な入浴体験を提供。
3.容姿への固定観念を払拭するプログラムも。

ジェンダーフリーな都会の浴場

メルボルンには国内有数のスパがあるが、公衆浴場で癒やしを求め湯船に漬かる習慣は、ほとんど根づいていなかった。〈センス・オブ・セルフ〉は、映画製作の傍ら日本の銭湯など世界中の浴場を巡ったメリー・ミナスと、北欧滞在中にサウナ文化の虜(とりこ)になったボタニストのフレヤ・バーウィックにより設立された。設計は建築やインテリアデザインを手がける気鋭の事務所3社による共同作業。その昔、倉庫として使われていた2階建てのレンガ造りの建物を改修した完全バリアフリー。車椅子でも安全に利用できる。

創設者のフレヤ(左)とメリー
左から、創設者のフレヤとメリー。

1階には思わず長湯してしまいそうなミネラル風呂やフィンランド式サウナのほか、46℃に保たれたトルコ式スチームルーム「ハマム」が。2階ではフェイシャルや頭皮、フットケアなど、自由にカスタムできる3種類のマッサージを提供する。また現代人が無意識にとらわれている身体に対する思い込みや強迫観念を客観視し、ありのままの自分を受け入れるためのオンラインプログラムも展開。

アンチ(反)ダイエット主義の栄養士や、セルフボディイメージの専門家たちによる講座形式で、マインドフルネスや瞑想のアクティビティを含むコンテンツを1年間にわたり視聴し、自分の内・外面と向き合うという試みだ。性別や体形へのステレオタイプを超えたウェルネスの新しいスタンダードは、日本の業界にも風穴を開ける可能性を秘めているといえるだろう。

連載一覧へ