3つのポイント
1.韓国唯一の写真媒体に特化した公立美術館。
2.デジタル修復室やライブラリー、暗室を完備。
3.気鋭の建築家がタッグを組んだ建物にも注目。
韓国初の公立写真美術館がソウル・倉洞にオープン

意外にも、今まで写真専門の公立美術館がなかった韓国。今年5月に開館した〈Photography Seoul Museum of Art〉(ソウル市立写真美術館)は、総敷地面積7,048㎡という規模感もさることながら、オブジェクティブもユニーク。韓国の写真関連資料を収集し研究を市民と共有。140年にわたるその写真文化を体系化し、未来へ繋げることを掲げる。
展示は性別や国籍、キャリアの長さにかかわらず、国内外の写真家とタッグを組む。現在開催中のオープニングエキシビションの一つは、1929年に韓国人として初めて写真展を開いた先駆者ジョン・ヘチャンや、同国最初期のフェミニスト写真家パク・ヨンスクら5名にフォーカス。新進アーティスト支援プログラムとして企画された若手写真家、キム・ボラの個展も話題を呼んだ。

オーストリア〈Jadric Architektur〉のムラデン・ヤドリッチと韓国〈1990都市建築〉のユン・グンジュが手がけた建物も見どころだ。隣接する〈ソウルロボット人工知能科学館〉と調和し、外壁は直線を積み重ねた形に。時間が経つにつれ太陽の光で黒とグレーに変化するさまは、写真が光と時間を捕捉する方法を建築で表現するという創造的な試みの賜物。
施設内には国内作家の写真集や研究書を収蔵するライブラリーや、デジタル修復室「MEDIA HALL」、暗室も備えている。現代韓国文化の、新たな扉を開くキースポットとなりそうだ。