市民投票で始まった、パリ路上の“自由本箱”が多彩に増加中!

日本に来て来て、あの店、このサービス!今回は、パリの“自由本箱”を紹介。

photo: Shiro Muramatsu / text: Chiyo Sagae / edit: Hiroko Yabuki

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3つのポイント

1.任意の設置で美的な本箱デザインが多数登場。
2.発見し、循環し、近隣住民が出会う街の基軸。
3.エコで就労支援にも役立つ箱作りシステムも。

市民投票で始まった、パリ路上の“自由本箱”が多彩に増加中!

本離れが世界中で進んでいると言われて久しい今日だが、近年パリに「本箱」が続々出現している。

扉の騙し絵風本箱

不要な本の提供と持ち帰りを促す同様のシステムは日本にもあるが、公共施設や学校など利用者の限られた場所にあるのが常。一方、パリの本箱はオープンエアの歩道や公園にあり、色やデザインも多種多彩で見飽きない。通りがかりのあらゆる人が惹きつけられて本を手に取る。

全体像を市に尋ねてみれば「市民投票の予算使途で選ばれて設置し、傷んだ本箱があれば区役所が対処しますが、団体や個人の設置も自由。市民の自由意志で営まれています」とのこと。

「現在、フランス全土に約1万個、パリとその近郊に約1,000個設置されています」と教えてくれたのは自治体などから本箱制作を受注する〈Recyclivre〉のヴィクトール・ゴッセ。ネット古書売買大手の一部署で、リサイクル材を使用して就労援助を兼ねる工房で制作し、本の供給も担う。

「米国発のこのアイデアは2016年にフランスで始まり、増加の一途」と語るのは新たな本箱の位置や写真の投稿により詳細な地図をネット上で公開する〈zonelivre〉のジェローム・プニエ。利用者の声に耳を傾ければ「普段手に取らない分野の本の面白さを発見」「本箱で出会う近隣の人たちとの交流が楽しい」と、予想外のメリットも。

本(=モノと知的財産)の循環にとどまらず、本箱は人、地域、社会を紡ぐ基点になった。

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