3つのポイント
1.円形バルコニーを連ね全席ベストポジションに。
2.映画館や劇場専門のピエール・シカンが設計。
3.座席へ直接サーブしに来てくれるバーを併設。
カンヌからも程近い、南仏ムージャンに現れた革新的シネマ
丸いポッドが並んで浮かぶさまは、SF感満載。ここは宇宙船⁉ではなく映画館。
今年4月に開業した〈オーマ シネマ〉は、シネフィルの理想を具現化した場所だ。つまり「どの席からもスクリーンが観やすい上映室」。設計は自身も映画ファンの建築家ピエール・シカン。これまでパリのシネコン〈UGC レ・アール〉や〈ラ・コリーヌ国立劇場〉などの文化施設を手がけてきた。
運営を息子ニコラスがともに担う。「ここでは、通常に比べ床の傾斜を緩めています。その代わり生まれた上部空間にバルコニーを設置。部屋を縦に使うことで、最前列も画面に近すぎず、最後列も画面から遠すぎない。バルコニー席では前の人を気にすることなく作品世界に没入できます」とニコラス。
出入口は後ろのみ。各バルコニーには専用ドアが付いていて、オペラ座をも彷彿させる造りだ。
ビジュアル面のインパクトもたっぷりな円形デザインは、上階席が張り出した昔ながらの劇場の構造をモダンにアップデートして生まれたという。後ろ側の壁とバルコニー内部には特製のドルビー製のスピーカーが埋め込まれていて、包み込むような立体的な音響が堪能できる。
「テクノロジーはどんどん進歩し、作品自体は家でいかようにも観賞できるでしょう。でも建物を自宅に取り入れることはできない。私たちは建築による、映画館というスペクタクル的体験の進化を目指しています」