「一生の仕事にしたいと15歳で飛び込んだ落語の世界。50年後も文化を継いでいけるよう、同世代にも魅力を伝えられないかと思案し、SNSで繋がった仲間たちと共に立ち上げました」
数々の取り組みの中でも彼らの発明と言えるのが、落語とクラブカルチャーを掛け合わせたイベント『YOSE』だ。江戸時代は市井の人々の交流拠点だった寄席小屋のコンテクストと現代のクラブの役割に共通項を見出して考案。出囃子代わりのテクノミュージックに誘われ、高座が始まる。
「披露する古典落語の内容は、基本的には通常の寄席のままです。見せ方や演出は工夫しつつも、本質的な面白さには手を加えたくないなと」と枝之進さん。チケットは毎回完売するなど反響は大きい。次々と新しい試みを繰り出す彼が大切にするのは“バランス”だ。
「落語界の中に閉じるのではなく、積極的に“遊ぶ”ことで、いろんな人と出会って外の感覚を持ち続けることを意識しています。その一方で、新しいものを作ることにフルコミットしてもダメ。ホームである天満天神繁昌亭の寄席に出続けて、僕が、一人の上方落語家として成長するのは大前提だと肝に銘じています。温故知新ならぬ“温故創新”を大切にして、保守と革新の両方の目線を持ち続けていたいですね」
桂枝之進の次を生み出す仕事術
1:新旧文化の“コンテクスト”を意識する
2:落語の本質は変えず、ありのまま伝える
3:積極的に“遊び”、外の感覚を持つ
4:一人の落語家としては研鑽を続ける
5:“温故創新”を胸に、フラットな目線を持つ