ジャルジャルと倉本美津留が追求する
アートと笑いの融合とは?
福徳秀介
SANDWICHさん、見せ方がプロでしたね。スケールがちょっとちゃいました。
倉本美津留
世界的に有名なチームが手がけてくれてるんで、なんでやねん!て話なんですけど。巻き込みたかったんです。ずっと、名和くんを。
福徳
会場にある作品は、すべて僕らジャルジャルのコントから生まれていて。例えば、呑み込めなかった大福を吐き出す、というコントがあるんですが、白い壁から白い手がすっと出ていて、丁重に大福を差し出している。吐瀉物ですけど。
後藤淳平
以前の展示では、箱の中に入れてましたね。印象がこれほど違うとは。
倉本
今回は本当に大きな一歩。JARTが始まったのは2018年かな。自分はもともとアートが大好きで。
アートと笑いは地続きだと常々思っているんですけど、中でもジャルジャルの笑いはそのままでアートといえるくらい、地続き感があった。それで笑いとアートを合わせる「JART」を始動したんです。
それまでも即興公演の『超コント』など、パフォーミングアートに近いことは一緒にやっていましたが、アートならオブジェとして形ある作品があってもいいなと思って、映像とオブジェがセットになった作品を作ることに。
そういう意味では、JARTの原点である「ひったくられ続けるバッグ」が最も思い入れがあるな。今回は制作過程も作品の一環として、作品になるもとのバッグをSNSで募集したりして量産したね。
福徳
1日で10個以上ひったくりして、全部見事に破けたんですけど、1個だけ、OUTDOORのリュックサック、キリン柄のやつが1ミリも破けなかったんですよ。1ミリも。
倉本
製品として優秀なことが図らずもわかった。
福徳
木に掛けて2人でぶら下がっても破けなかった。OUTDOOR、すごかったですね。
倉本
そこの驚きね。変化が一番少ない作品になった。でも、そのエピソードが作品に含まれているのがやっぱり面白い。会場ではメイキング映像も流しているので、ぜひ見てほしいです。

後藤
今回は『Room』というコンセプトルームも作っていて。僕の思い入れがあるのは、そこにあるクモの作品です。このクモもバッグも、実は相当古いネタがベースでして。
過去にお客さんの前でやって終わっていたものが、アートとして十数年ぶりに復活してきた。見せ方を変えることでまた輝くネタもある、というのは発見でした。
倉本
お笑いなのか、アートなのか。作品をどっち側から見るかで意味合いは全く変わるよね。でもどちらにせよ最終的には笑ってしまう。そこがJARTの大事なところ。
有名なアートっていっぱいあるけど、笑っちゃいけないものとして扱われることが多い気がして、不毛に思っていたんです。
福徳
倉本さんと美術館に行った時ですよね。現代アートの変遷を辿る企画で。ドラムセットの上に骸骨がぶら下がっていて、骸骨の頭が「ベン!ベン!ベン!」と太鼓叩いてる作品があって。僕的にはかなり面白かったんですけど、お客さんは全員静かに見てた。
で、倉本さんが「これはなあ、これでこれでこやねん!」と作品について話したら、スタッフの方に「静かに」と注意されて。帰り道で「おかしいやろ!コント真顔で見られてるようなもんや!」となった(笑)。
僕は結構、これが最初のきっかけやったと思いますね。アートって必ずしも高貴なものじゃない。笑う美術館があってもいいんじゃないか、と。
倉本
それでおもろなって。ジャルジャルのコントも実はアートとして捉えられへんか?って流れに。
後藤くんは同じ頃、僕の誕生日パーティで名和くんと会って仲良くなったんだよね。そこから京都のSANDWICHさんに訪問することになったり。そんなふうに、日常とアートの境目ってなんやねん、という思いが強くなっていった。
福徳
今回の展示でようやく重い扉が開いた感じ。
後藤
最初は全く別ものだと思ってたんです、アートとお笑いって。けど、地続きなんやなって思えてきた。お笑いのお客さんとアートのお客さん、そこに流れができればいいなと思いますね。
倉本
今回はアートファンに、特にジャルジャルのことを知らない人にも見てもらいたいですね。
