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クリエイティブディレクター・南雲浩二郎の居住空間を形づくるもの。「価値よりも質」が大切

心を動かすアートや骨董、手放せない愛用品。居住空間を形づくるもの。

photo: Tetsuya Ito / text: Masae Wako / edit: Tami Okano

聖書の文言を刺繍した19世紀イギリスの額と北欧の陶器。金色の絵の具だけで描いた現代アートにアフリカのカゴ。時代も国もさまざまなものが、見晴らしのいいヴィンテージマンションに並んでいる。ブルーグレーの壁紙を貼ったリビングの隣は、和室を改装したダイニング。静謐な雰囲気をつくる畳は残してテーブルを置き、パートナーは仕事場としても使っている。

「ものは好きですがコレクターではありません。何がいちばん好きっていうのもないし、この部屋のここに置くため、みたいな買い方もしない」。何かに縛られるのは苦手……と笑う南雲浩二郎さん。

「質の高いものが好き。かたちが美しいという質の高さもあれば、“この椅子の木の質感が素晴らしい”とか“この籠は編みの腕前がすごい”というクオリティの高さもある。ラフなものも嫌いじゃないし、出自がわからなくてもいいけれど、洗練はされていた方が好ましいかな。稀少や有名といった価値より質に興味がある」

現代アートや骨董が本と共に置かれまるで書斎のようなダイニング
現代アートや骨董が本と共に置かれ、まるで書斎のような南雲浩二郎さんのダイニング。壁にはドイツの古いポスターや、刺繍で文字を刺した額。パプアニューギニアの首飾りもある。棚には、段ボールでできた本堀雄二の仏像やスウェーデンの陶器。写真右手の椅子は中国・明式で、照明はアルヴァ・アアルト。様々な国や年代のものが渾然一体となって並ぶ。

「好き」で終わらせず、ちょっと勉強することも必要だと言う。

「よく“感性が大切”と言いますが、感性だけでは面白さが広がらない。本を読んだり背景を調べたり、自分がなぜそれをいいと思ったかを意識するのも大切です」

心惹かれた北欧の陶器と中国の古陶に、実は歴史的なつながりがあると知って嬉しくなったことも。

「姿かたちを好きと思えるなら、その先を知った方が僕は楽しい。ものへの理解も深まりますし、次へと進むきっかけにもなります」