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お金も技術もない。〈COFFEE POST〉の2人がコーヒー屋台をはじめるまで

新しい仕事をはじめる。長い人生、何も仕事は一つに絞ることはない。農業に本屋、コーヒーショップに俳優まで、魅力的な仕事はたくさんある。転職するもよし、副業として掛け持ちするもよし、小さな一歩を踏み出して、広い世界を見てみよう。

photo: Kaori Oouchi / text: Yuriko Kobayashi

教えてくれた人:関原洋文(〈COFFEE POST〉副代表)

屋台で経験を積む。

埼玉県の川越市を拠点に三輪自転車の屋台でコーヒーの移動販売を行う〈COFFEE POST〉。2018年の5月に移動販売をはじめ、翌年の7月には店舗をオープンさせた。

代表の川島崇嘉さんと副代表の関原洋文さんは福島県出身。共に大学卒業後に就職したが1年で退職。「何か面白い仕事をやろう」と、コーヒー屋台をはじめた。

「お金もないし、技術もない。それで思いついたのが移動販売しながらの修業。僕はタイで教員として働いていたのですが、バイクにサイドカーを付けた移動販売が多かったんですね。屋台はお客さんと店主、さらにはお客さん同士のつながりが生まれやすい。僕たちも屋台でそんな空気感を出せたらと思って」

キッチンカーという選択肢もあったが、初期投資は安くても100万円以上。一方の屋台は50万円あれば十分ということで、即決した。縁もゆかりもない川越を拠点に選んだのも、実務的な部分が大きい。

「自転車屋台でコーヒーを出すには保健所の営業許可が必要なのですが、自治体によって許可の下りやすさが違うんです。川越は比較的そこが寛容で、かつ観光地ということで人出も多い。町の雰囲気も気に入って、もう、ここしかない!と」

出店する場所は毎日替えている。その経験が実店舗の開業に大いに役立った。

〈COFFEE POST〉抽出道具
屋台の中はこんな感じ。限られたスペースでもできるだけおいしいコーヒーを淹れたいと、コンパクトでも性能のいいミルを厳選。休日には1日80杯ほどオーダーが入る。

「週末は人通りがあっても平日は無人とか、時間帯によって日当たりが極端に悪いとか、ぱっと見ではわからない町の特性が見えてきたんです。おかげで的確な場所に店舗を出せました」

コーヒー屋台をするうえで欠かせないことは「体力」と「コミュニケーション能力」だそう。

「夏は大量の氷の運搬をしたり、冬は極寒の中で立ちっぱなしと、とにかく体力勝負。
あとは出店場所を確保するのが屋台の悩みの種なのですが、常連さんから出店場所を紹介してもらうことが多くて、すごく助かりました。町に溶け込んでコミュニティの一員になることが、屋台で成功する秘訣の一つです」

〈COFFEE POST〉副代表・関原洋文
出店場所までは自転車を漕いで向かう。自転車屋台は所沢〈サンリン自転車生活社〉の職人にオーダーして作ってもらった。