教えてくれた人:石谷貴之(バリスタ)
コクを引き出す、
湯の注ぎ方を覚える。
酸味の爽やかな浅煎りのエチオピアや、苦味の濃厚な深煎りのマンデリンなど。街中にロースターが増えて、コーヒーの選択肢は広がった。
しかし自宅で淹れるとなると、豆の挽き方や器具のセレクトなど、迷うポイントは多い。どこから注意して、はじめればいいのだろうか。
「ハンドドリップの場合、まずは正しくお湯を注ぐことからはじめましょう。これは専用のドリップポットを使わなくても、例えば先をすぼめた紙コップでも実践が可能です」と、指南する石谷貴之さん。
大切なのは、道具の良し悪しではなく、一定の量で湯が注げることだと話す。
「ドリッパーに粉状の豆をセットしたら、まずは少量のお湯で蒸らします。この後のお湯の注ぎ方が最大のポイントで、ドリッパーに対して立体的に円を描くように、ポットの先を動かします。注ぎ口からは一定の太さでお湯が流れ続けるために、豆全体に均一にお湯が行き渡り、十分にコクが引き出されます」。
仮に水平に円を描けば、湯が一気に溢れ出たり、逆に途切れたりして、コクの抽出が不十分に。苦味や酸味のみが際立って、雑味の原因になってしまう。
「苦味、酸味、甘味、旨味といったコーヒーの味わいの要素は、深いコクを伴うことで、口の中でまとまります。立体的な円を描いてドリップされたコーヒーは、冷めてもおいしいんですよ」
もちろん、「豆は中細挽き」「湯の温度は90℃」「蒸らし時間は30秒」など、ほかにもおいしさを生み出す条件はある。しかしそれらは電動ミルや温度計、コーヒースケールに任せればOK。
まずは自分の手を動かして、注ぎ方を極めることが重要だ。