チェット・ベイカーのトランペットと
セッションするかのようなドリップ。
「まもなくオープン。今日もジャズをガンガン、マキシマムかけとります」。毎朝のインスタグラムにポストされる“本日のレコードとコメント”からは、店主の気分が、その日に選んだ一枚から伝わってくる。
英国人を父に持ち、映画『さらば青春の光』の主人公・ジミーのような顔立ちの店主の愛知アンディー有さんは、ある時、以前暮らしていた東京のジャズ喫茶でジャズのレコードの魅力に目覚め、その深い魅力にハマっていった。
天神橋筋に面した明るい店の扉を開けると全身に音を浴びせるようなイキのいいトランペットの音に迎えられた。彼がかけるのはレコードのみで主にジャズ。お気に入りのチェット・ベイカーのレコードは70枚以上、特に後期のチェットがお気に入りで1日に2~3枚は必ずかける。
カウンターの向かいの壁一面にある棚には好きなレコードや本がたくさん飾られていて、ここを見れば、店主と趣味が合うかどうかが一目でわかる。店を始めてさらにレコード買いが加速してしまったアンディーさんは、週に2~3回はレコード屋を覗く。
好きな店の共通点は店主の人柄だと言い、音楽の話をすることが好きな彼は自然と話し好きの店主の店を選ぶ。時には世間話から有力な入荷情報を得ることも。彼にとってのレコ屋はしゃべり場でもある。
最近のマイブームはブラジル音楽と言いながら、彼が仕事帰りに自宅までの道のりにあるよく立ち寄る「道すがらレコード店」をそっと教えてくれた。
ウィリアム・モリスの壁紙やアーコールの椅子、英国の旗が飾られた店内は、ブリティッシュテイスト。ペーパードリップがメインで豆は店主の音楽仲間の豊中〈チッポグラフィア〉のもの。
tototo RECORDS
(南森町)
店の近くにできて、ほんとヤバイんです。
「80~90年代のロックを見つけに来ます」。昨年10月に〈LONG WALK COFFEE〉の近くにオープンしてからは、アンディーさんが仕事帰りについ立ち寄って散財してしまう魔のスポットに。
ロック、ジャズ、ワールド、和モノ、シティポップ、サントラ、珍盤7インチまでオールジャンル「買い取り」の品揃えが魅力。
Jazz Records seeed
(梅田)
音楽話に花が咲くと、ついつい長居。
アンディーさんは昔からここに足繁く通い「JAZZをたくさん教えてもらった」と言う。話好きの店主の長門淳也さんとは気づけば1時間話し込むこともざらで、まさにしゃべり場レコ屋。
“頑固親父のいない入りやすいジャズの店”を目指し、廃盤オリジナル盤の良心的なプライスにも納得。ジャズ、ブラジルが充実。
MY RECORD
(中津)
彼、さりげなく好みの盤をかけるんです。
「アシッドフォークの“壁”がすごくて!」とアンディーさん。ロック、ジャズ、和モノ、シティポップから80's MTVまでオールジャンル店かと思いきや、壁にはブリティッシュフォークやサイケなどの貴重なオリジナル盤が。
若き仙人のような店主のガッキーさんはそんな彼の好みを察してそっと好きそうな一枚に針を下ろす。