物静かな所作に映えるモダンジャズと、
深いネルドリップを一杯。
「本日もいつもの路地裏でゆるりとお待ちしております」。
毎朝のインスタグラムのストーリーに深煎りコーヒー豆の写真と一緒にポストされるのは、渋いジャズや男性シンガーソングライター、時々ロック。音楽好きの店主・井尻健一郎さんは、JR大正駅近くにあった喫茶店跡に約4年前に焙煎機を併設した店を始める。
「ネルドリップもレコードも手間がかかるから好きなんです」と言って、彼がお茶のお点前のような所作でコーヒーをそっとネルで落とすさまは、レコード針や盤を掃除し、静かに針を落とす仕草にも通じる。
朝はジャズでスタートすることが多く、昼にはロックやシンガーソングライター、夕方にはソウルジャズやピアノトリオなど、その日の気分はもちろん、時にはお客さんのコーヒーを飲む姿や雰囲気に合わせてこの一枚を選ぶこともあるという。
店主は時折、終わったレコードを静かに裏返し、コーヒー豆の選別をし、カップをきれいに拭き上げる。この店ではみな会話も小さな声で節度が保たれており、誰も急ぐ人はいない。
井尻さんのレコード保有数は約1000枚。休みの日や仕事帰りにレコ屋に立ち寄ることが多いといい、その日の目的に応じてキタやミナミに繰り出し、ハンターのようにじっくりと目当ての盤を手に入れていく。彼のレコード選びはその仕事ぶりと似て、とてもスマート。
店主との会話は必要最低限で、穏やかにレコード棚を見て回る。それは彼の店での接客の距離感ともどこか似ている。
コーヒーは自家焙煎の深煎り豆を使ったその日のブレンド1種のみ。オーダーはネルかペーパーのドリップの好みを伝えるだけ。店内にはコーヒーを楽しむ脇役として、レコードやCD、本なども並び、購入可。
NEWTONE RECORDS
(心斎橋)
店主の選盤センスに惚れ込んでいます。
「新譜ならここですね。彼のセンスを信頼しています」と井尻さん。物静かな雰囲気の店主・齊藤吉恭さんの審美眼で選び抜かれたオルタナティブハウス、ディスコ、テクノなどのダンスミュージックやジャズ、ソウルなど品揃えはこの店ならでは。海外ディストリビューターとのパイプも太い。
レコードショップナカ
(なんば)
大衆居酒屋に行くような気分ですかね。
「昔のロックやソウルをリーズナブルに探す時に来ます」。仕事を終えると大衆居酒屋へ繰り出すことが多い井尻さんにとってこの店は居酒屋と同じく、気軽に来られる店だという。
90年代からなんばにある懐かしいはずのレトロな店の売り場に最近目立つのは和モノレコードを探す外国人の姿。ようやく時代が追いついてきた?
ディスクユニオン 大阪店
(梅田)
欲しい一枚を探すなら、棚は端から端まで。
「まずはジャズ新入荷コーナーですね。レコ屋巡りの総本山です」。ジャズ、ロック、ポップス、クラシック(別館)の品揃えの鮮度は抜群で、ジャズ売り場だけで多い時には週に約1,000枚もの新入荷在庫が入れ替わるといい、毎日顔を出す客も多数。