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世界からお届け!SDGs通信トロント編。高齢者用の“あつ森”!?オンラインコミュニティ〈VR.MIGHTY〉

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はトロントから!

text: Hatsuki Matsui / edit: Hiroko Yabuki

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80歳後半から半数が認知症になる時代!VRソーシャル空間で予防と孤独ケア

高齢者、特に認知症を患う方々の孤独ケアの重要性を再認識する必要がある。一般に認知症リスクは65歳から徐々に高まり、80歳半ばからは半数以上が認知症になるとされている。だがカナダ公衆衛生庁の調査によると、カナダ国内では高齢認知症患者の61%が専門的なケア施設に入ることができず(または自らの意思で)自宅療養をしているという。一人暮らしの高齢者のケアが必要であることはもちろんのこと、家族と同居している場合でも孤独を感じやすいため注視が必要だ。また認知症は病状の特殊性から患者と家族の間に“精神的な距離”が発生しやすい。それがさらなる孤独感を引き起こし、うつ病を発症したり、認知症が悪化することもある。このような認知症と孤独が引き起こす悪循環を断ち切る糸口として、ソーシャルVR空間の活用が注目されているのだ。

〈VR.MIGHTY〉は高齢者および認知症患者のためのヴァーチャルオンラインコミュニティを提供するツールだ。彼らの仮想空間はVRヘッドセットを着用して楽しむもので、孤独感を解消するアクティビティとレクリエーションセラピーが充実している。空間内に憩いの場が点在するため新しい出会いもあり、一緒にいるかのように語り合うことで気晴らしを促す。皆で一緒にヨガでリフレッシュしたり、ボードゲームや映画鑑賞も。ビーチパーティではしゃいだり、川でボートに乗ったり、登山をするなど、家にいながらにしてヴァーチャルな自然散策も楽しめる。いわば高齢者用の「あつまれ どうぶつの森」だ。高齢者が仮想空間を楽しむことにより認知機能の向上が期待されるという研究内容も発表される一方で、VR機器を装着することに対する抵抗感や、プレイ中の酔いなどの不快感などの懸念事項がいまだ残されているのも事実。体調と身の回りの安全に注意しながらも、高齢者がVRを使いこなす未来が楽しみだ。

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