Learn

Learn

学ぶ

世界からお届け!SDGs通信 ロンドン編。食品ロスに挑戦する、エコなビールメーカー

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はロンドンから!

text: Megumi Yamashita / edit: Hiroko Yabuki

連載一覧へ

廃棄予定のパンで、美味しいビールができるんです

15歳の時から店や農家から余った食品を回収して豚や鶏を育てるなど、食品ロスの削減に挑んできたというトリストラム・スチュアート(46) 。食品ロスの削減を訴えてきたパイオニア的存在だ。彼の試算では、先進国で廃棄される食料の4分の1で、飢餓に苦しむ10億人の人々を救うことができるとか。また温暖化対策や環境保全のためにも、食品ロスの削減がいかに効果的であるかを訴えてきた。

そんな彼が具体的なアクションとして2016年に始めたのが、廃棄されるパンを原料の一部に醸造するビールのメーカー〈Toast Ale〉(トースト・エール)である。イギリスではなんとパンの約44%が廃棄されているとか。そこでサンドイッチ用に切り落とされる耳の部分をはじめ、売れ残ったパンを回収して、ビールの醸造に挑戦。モルトの約4分の1を乾燥したパンに代替しながら、美味しいビールの醸造に成功したのである。

ビールの種類は、ペールエール、ラガー、IPA、ローアルコールなど各種。ビンと缶で購入できるほか、ロンドンには生が飲めるタップルームもある。食の無駄をなくし、生産のシステムの改善を広めることが目的なので、パンを使ったビール醸造法も公開、マイクロ醸造所のポップアップも始まっている。またホームページには国会議員に食の無駄をなくす陳情の方法なども掲載されている。

創設以来、ビールに再生された廃棄予定のパンは300万枚あまり。2018年にはビールメーカーでは初のBコープ認証を獲得しており、利益は食や環境関係の慈善団体などに寄付することも企業目的だ。昨年までに寄付した金額は10万6000ポンドにのぼる。利益ではなく、人と地球の持続のための新しい仕組みに挑戦する、次世代型の企業としても注目されている。

連載一覧へ