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世界からお届け!SDGs通信 香港編。1杯飲むと熱帯雨林に1本植樹!資源循環型の画期的なバー

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回は香港から!

text: Miyako Kai / edit: Hiroko Yabuki

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周辺飲食店の余剰食材を生かして、地球に優しいカクテルを

有名バーテンダーのアグング・プラボワ率いる〈Penicillin〉は、サステナビリティをコンセプトにした香港初のバーとして2020年にオープンした。すぐに国際ランキングの常連となり、2023年版「アジアのベストバー50」では26位にランクイン。同アワードでは、2021年にはアジアをリードするサステナブルバーを讃える「Ketel One Sustainable Bar Award」を受賞している。

〈Penicillin〉が重視するのは、資源を循環させるクローズドループだ。コンセプトに沿った高品質カクテル開発のために、店内にはバーエリアに加えて、発酵室や実験コーナーも設置されている。強みは自店内での廃棄物削減に加えて、食の都・香港の中心地である中環ならではの、周囲の多彩な飲食店との連携だ。

オープン以来のシグネチャーカクテル「One Penicillin, One Tree」に関しては、一風変わったシステムを導入している。ワンオーダーにつき、アグングと妻のローラの出身国であるインドネシア・ボルネオ島で消失の危機に瀕するカリマンタン熱帯雨林に、高さ42m近くまで成長し200年以上の樹齢に達する高木が1本植樹されるのだ。この1杯で150g、200年間で4400kgにも及ぶ二酸化炭素を除去できるとされている。メニューに記載されたQRコードから、植樹される場所をチェックすることもできるのも面白い。

味わいに関してもユニークな試みが満載だ。近隣のスイーツ店から毎晩収集される余剰ホワイトチョコレートを漬け込んだウィスキーと、形がいびつなため廃棄となったイチゴとケフィアを入れて発酵させたココナッツウォーターがベース。そして近所のメキシコ料理店で余ったアボガドの種を24時間凍らせて氷の代わりにする、意外性たっぷりの一杯だ。2020年12月から始まったこのカクテルで、すでに1万1700本の植樹を達成しているという。独自性のあるコンセプトを徹底的に貫きながら、カクテルとしても美味で魅力的。サステナビリティを意識しないで訪れたとしても、一杯いただくことで自然環境の保護に貢献できる、とびきりのバーだ。

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