乳幼児には絵本、小学生にはメガネ、高校生には学習機会をサポート
韓国で2023年に生まれた子どもの数は約23万人。合計特殊出生率は0.72、首都ソウルではさらに低い0.55となり、8年連続で過去最低を更新中だ(日本は1.2)。
こうしたなか、ソウル市は少子化対策に取り組むとともに、子どもの教育をサポートするさまざまな政策を実施している。ソウル市に居住する妊娠3カ月から出産後3カ月の養育者には、胎教や読み聞かせにぴったりの絵本や子育て情報本を無料で郵送。
以前は図書館や住民センターを訪問して申請・受領する形だったが、昨年からオンライン申請&宅配便での受け取りが可能になり、いっそう利用しやすくなった。
昨年度は3万7000人がサービスを利用し、98.2%が満足したと回答。子育て情報本は出産・育児の専門家と市民による投票、絵本は読書の専門家や司書がセレクトしたものが提供される。
さらにソウル市は民間のメガネメーカーと連携して、12歳以下の子どもに視力検査と最大20%オフのメガネ割引クーポンを配布するプロジェクトを実施。今年は割引クーポンを利用できる店舗が1400カ所に大幅拡大され、2月の募集には昨年の約4倍となる8000件以上の応募が殺到したことから、4月に早くも2次募集が行われた。
また、2021年からソウル市とウリィ金融未来財団は、社会経済的な理由で塾通いが難しい6~24歳にオンライン授業やマンツーマンのメンタリングなどを無料で提供する「Seoul Learn」プログラムを実施している。
今年は、Seoul Learn会員の中から学習意欲の高い高校1年生90名を選抜し、さらなる支援を行う「ウリィ未来Seoul Learner」事業がスタート。参考書や文具を購入できるように、ウリィ金融未来財団が年間200万ウォン相当の学習費を支援するほか、長期休み期間には国内名門大学と連携した進路キャンプ、合宿形式の集中学習キャンプなどを開催するという。
2024年度のSeoul Learn会員の大学合格者数は、韓国最高峰のソウル大学12名を含む682名。昨年の462名から220名(47.6%)増加した。
韓国統計庁の家計動向調査によると、上位20%の所得者層が支出する子ども1人あたりの教育費は月額63万3000ウォンで、下位20%の世帯(7万6000ウォン)に比べて約8.32倍も多い。所得格差が教育格差につながっていると分析されるなか、Seoul Learnは低所得層の子どもの学習をサポートする「希望のはしご」の役割を果たしていると評価されている。