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世界からお届け!SDGs通信 メルボルン編。個人間の会話を促進する自死予防の声かけ運動

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はメルボルンから!

text: Mifumi Obata / edit: Hiroko Yabuki

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「大丈夫?」と声をかけ手を差し伸べる、創設者自身の経験に基づくキャンペーン

「R U OK?」は「R(Are) U OK?(大丈夫?)」というスローガンを掲げる自殺予防キャンペーンだ。2009年に創設者であるギャビン・ラーキン氏が自死により父親を亡くした経験から、同じ喪失感を味わう人が増えないようにと立ち上げた。毎年9月の第2木曜日に「R U OK?」デーを開催。友人や家族、同僚に「大丈夫?」と問いかけ、周囲の様子を確認し、思いやりと共感を持って話を聞く。

学校や職場、地域社会での取り組みは、先住民やLGBTIQ+コミュニティなど全国のさまざまなコミュニティに広がりを見せている。ポスターやビデオなど年間を通じてアクセスできる充実したリソースや、印象に残るロゴが印刷されたTシャツなど関連グッズの販売が全国的な周知の一助を担うほか、発足以来ヒュー・ジャックマンやナオミ・ワッツなど多くのオーストラリアの著名人が、認知度を高めるためにアンバサダーやサポーターとして参加。現在は専門家、政府、企業、学校、自治体と協力し、多くの支援を受ける全国的な慈善団体に成長した。会話を促すためには信頼関係に加えて、会話をいつどこで行うか積極的に耳を傾けることができる環境や配慮も必要だが、「R U OK?」と声をかけるだけならいつでも簡単にできる。誰かに手を差し伸べるのに専門家である必要はなく、良き友人であり、良き聞き手であればいい。彼らが心を開き、適切なサービスや支援を受けるための道筋をつくる、最初の一歩となる手段なのだ。

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