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世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。アホローテが暮らせる湖へ。復元生態学研究所の活動

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はメキシコシティから!

text: Miho Nagaya / edit: Hiroko Yabuki

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国のシンボルの危機を救うことが、環境問題の改善にも役立つ

ウーパー・ルーパーの名で知られるサンショウウオの一種・アホローテ(またはナワトル語でアホロートル・メキシコサラマンダー)は、メキシコでは古代の神の化身とされ、同国の50ペソ紙幣にもそのイラストが描かれるほど、国民から愛されている。発祥の地は、700年以上の歴史がある浮き畑を持つ湖がユネスコ世界文化遺産に登録されている、首都南部のソチミルコ。1998年には1平方キロメートルあたり6000匹いたが、2014年には同区画内で36匹までに激少し、絶滅の危機に瀕している。

そんな状況から、メキシコ国立自治大学生物学科内の復元生態学研究所では、アホローテの保護を2002年より続けている。その運営スタッフのひとり、生物学者のディアナ・ラウラ・バスケス・メンドーサは、こう語る。

「アホローテの減少の最たる理由は、湖の水質を維持するのに役立っている浮き畑の60%以上が空き地のため。遊覧船を使った観光業に転業する人が増えて、本来の湖の姿が失われつつあるのです」

同研究所は、これまで40の浮き畑を復活させ、提携する18の生産者たちの浮き畑周辺に、36のアホローテのための避難所を作った。そこは71の濁水を濾過するバイオフィルターを使い、ソチミルコの運河の水質向上に貢献している。これは直線距離にして6キロメートルに相当する。

さらに浮き畑で生産された作物の販売も担う。研究所内の水槽でアホローテを30〜45センチの大きさになるまで生育させたのちにそれらの避難所に放ち、繁殖を行うのだ。浮き畑周辺は国の水質基準をクリアするまでになったが、農業を行っていない浮島周辺の水質は汚染されたままだ。

「アホローテが生息できる湖を維持するためにも、浮き畑での有機農業は重要です。雇用も安定し、作物は栄養分が高く、消費者にとってもプラス。まさに循環型の貢献ができるのです」とディアナ。とはいえ、そのモデルの継続には多くの支援が必要だ。2022年より始まった寄付キャンペーン、「AdoptAxolotl(アホローテを養子にしよう)」では、アホローテの名付け親になれる上、バーチャルで飼育することもできる。金額は200ペソから受け付けていて、今までに内外から354名が参加。その活動は多くのメディアにも取り上げられ、注目されている。

「環境はみんなの責任から成り立っています。私たちの活動により、専門的知識がなくても生態学に関わり、アクションを起こすことは可能だと伝えたいのです」

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