アートのあり方の再構築を示す〈リゾルブ〉
〈リゾルブ〉は、アキル&セス・サカフェ・スミスとメリッサ・ハニフの3人のアフリカ系イギリス人によるコレクティブ。建築、デザイン、アート、エンジニア、テクノロジーなどの枠にとらわれず、参加型のインクルーシブなプロジェクトで注目されている。
彼らの地元でもあるカリブ系やアフリカ系住民が多いロンドン、ブリクストン地区のコミュニティ再生プロジェクトなど、「先人の知恵に学びながらコミュニティの拠り所になる場」を住民ととも創る活動を行ってきた。
そんな彼らにとって初の権威あるギャラリーでの展示が、この春〈バービカン〉内の〈ザ・カーヴ〉で開催された「them 's the breaks」だ。既存の組織やアートのあり方、社会の仕組みに少しずつ入り始めている「ヒビ」。それを一気に広げることを目指す、いわゆるアート展覧会とは趣向の異なる内容になっている。
会場に設置されたベンチなどのインスタレーションは、ロンドン周辺の美術館などから不要になった什器や建材をもらい受けてリメイクしたもの。設営自体もオープンかつ参加型で行われている。この展示会場を「舞台」にして、シェフィールドのLGBTQがリードするイベントスペースGUT LEVELなどがテイクオーバーするほか、アーティスト、ライター、アクティビストなどがイベントやトーク、ワークショップ、パーティーなどを主催。「ヒビ」を広げて、その展示が外まで漏れ出すこともその意図である。
使われているリサイクル資材には「デザインミュージアム」など、どこから来たものかも明記されており、会期中も必要に応じて新たな展示が追加になる。会期後は希望者に展示物や残った資材を無償で引き渡すこともこの展覧会のポイントだ。閉会前の週にはリサイクルや廃材を使ったコミュニティプロジェクトを手がけるYes Makeが会場に入り、展示の解体や再利用作業を担当することになっていた。
ところが、会期の途中に「展示関係者(若い黒人クリエイターや家族など)がバービカンのスタッフに不当な扱いを受けた」「パレスチナ支持的との理由でイベントが突然キャンセルされた」などの理由で、会期を残して、突然、展覧会の中止を発表。タイトル通り、慣例を破る形で展覧会を終え、逆に大きな賛同を得ている。イベント自体は中止となったが、展示会場の一部は当初予定の会期(〜7月16日)まで公開中。
イギリスでは「SDGs」という言葉自体はほぼ耳にすることはない。一方、サステナブルな未来実現のための取り組みは、若い層から草の根的に広がっている。RESOLVEの取り組みもその一例で、SDGsの17のゴールのいずれにもインパクトがある活動だ。アートが投資の対象となり高額で売買されるなか、アートのあり方そのものに一石を投じるものでもある。