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世界からお届け!SDGs通信 メキシコシティ編。ウミガメやサンゴ礁が間近に!エコツーリズムを牽引する環境保護センター

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はメキシコシティから!

text: Miho Nagaya / edit: Hiroko Yabuki

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カリブ海の宝探しをきっかけに生まれた、生物多様性を学び、自然保護体験ができるコミュニティ

マヤ語で“ウミガメの場所”という意味を持つアクマルは、キンタナ・ロー州カンクンから100kmほどに位置する小さなビーチ・コミュニティ。1958年ココナッツ農園の跡地を、メキシコシティの実業家で、カリブ海に沈む難破船から考古学的に価値のある宝飾や調度品を見つけ出したコレクター、パブロ・ブッシュ・ロメロが、歴史博物館を建設するために購入。

複雑な入江からできている同地に無数のサンゴ礁が存在し、希少なウミガメの生息地でもあると知ったブッシュは、その環境を守るためにダイビング・クラブを運営しながら海洋保護活動を開始。1993年に社会組織として〈Centro Ecológico Akumal〉(アクマル環境活動センター)を設立した。

以来、内外のNGOや、政府・教育機関と提携しながら、生態系研究や保護を続けるほか、センターの維持のために、ボランティアを公募し、コガメの巣を守りながら2週間滞在するタートル・キャンプや、サンゴ礁の修復に有料で参加できるエコツーリズム活動も行っている。

2022年、カンクン国際空港には海外からの観光客648万以上が到着し、その数は前年から66%以上増加しているが、アクマルを訪れる観光客も2013年から3倍以上となっている。8年前から同センターのディレクターを務める海洋学博士のエクトール・アントニオ・リサラガは、観光客の増加を喜ぶ一方で、観光業の発展に伴う建造物の増加による海水汚染を危惧していると語る。

「対策や規制を政府に掛け合う活動を地道に続けていくことが私たちの仕事。自然と共存できる観光のかたちは、きっとあるはずと信じています」。

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